これを全部読んだら神! 太田裁判判決全文


 平成15年10月29日。自動車趣味の根幹を揺るがす可能性のある判決が出された。東京地裁判決 平成11年(ワ)第25386号損害賠償請求事件、当HPで「太田裁判」と読んでいる、FISCOで起こった事故の裁判である。
 この裁判では「誓約書」の有効性についても判断がなされた。ここで言う誓約書とは、走行会に申し込むときいつもサインする「事故があっても主催者の責任を追及しない」という紙のことである。この裁判はプロの世界の話だが、自動車趣味など遊びの世界に目を転じると、この免罪符のような誓約書が必須となる。遊びだから儲けがない、儲けがないから賠償できない、賠償できないものを賠償できるとはいえないからだ。免責事項、平たく言えば「何があってもお互い恨みっこ無し」という大前提がないと、全く読めない状況下で自己の限界を追求するような遊びは成り立たないのである。自己の限界を超えたとたん、何らかの損害が発生する可能性が高まるからだ。この誓約書が無効となると「何もするな」と言われているのと同じこと。
 結局この裁判では誓約書は無効との判断が下された。レースを主催して利益を得ているのに責任は取らないというのは不公平なので誓約書自体が無効という判断である。自動車趣味的には非常に不利な判決である。しかし判決文をよくよむと、OFF会や走行会で利益を得ないのならば誓約書は有効ともとれる書き方がしてあった。どう解釈すればよいのか・・・そこで実際にFISCO側についた弁護士の人と話をして自動車趣味における誓約書の有効性等を聞いてみた。

 今回それに先立ち、太田裁判判決文のほぼ全文の「メモ書き」を掲載する。これを読んで、裁判所が認定するこの事故はどのようなものだったのか、双方の主張、自分が当事者となったときどうすべきなのかを考えて欲しい。ただし、総文字数約5万字。原稿用紙にすると120枚以上となる。これに目を通したら神の領域に足を踏み入れる。が、結構興味深い内容なので読めると思うよ。
 以前紹介した「太田裁判の開けたパンドラの箱」では、判決全文より短い判決要旨をもとに理解しやすく解説しているので、併せて読んで欲しい。
太田裁判があけたパンドラの箱、その1

太田裁判があけたパンドラの箱、その2


 これを読むと、いろいろな考え・経験・立場の違いにより、思いはまちまちだと思う。私の結論をいうと、「覚悟のない人間はサーキットなんか走るんじゃない」の一言に尽きる。覚悟があれば、それにすがり無理矢理にでも自分を納得させる・諦めがつけられるからだ(後悔はすると思うけど)。そうすると次頁以降に書いてあるような膨大な手間を他人に対してかけさせ、原告・被告ともに痛い目に会うこともない。だから、私は走行会などには出ないのである。

 なおこの裁判は2005年夏に東京高裁で和解が成立している。和解とは双方の歩み寄りで成立する。つまり原告・被告とも賠償金額等が少なくなる。

主文
原告の請求、事案の概要および前提事実
原告の主張
損害(走行会で走りたい人はこれを見て覚悟を決めよう)
被告らの主張
原告の反論
東京地裁の判断:事故発生前後の経過と事後原因等
東京地裁の判断:被告らの債務不履行責任・不法行為責任等
東京地裁の判断:誓約書の効力について(最重要事項)
東京地裁の判断:損害
東京地裁の判断:過失相殺(レーサーが絶対に裁判で勝てないワケ)
まとめ
公判資料の閲覧のしかた