原告の反論


 ここでは、前頁に書いた被告の主張に対する原告の反論が述べられている。



 (3) 原告の反論
 ア 被告テレビ東京の主張について
  (ア) 被告テレビ東京は、本件レースを主催したものであり、被告JAFに登録されていなかったからといって、原告との間のレース参加契約が無効になるわけではない。  被告テレビ東京は、本件レースについて、広告宣伝業務しか担当していないと主張するが、主催者が複数いる場合に、諸活動を内部分担することは一般にあり得ることであって、一部の業務しか分担しないからといって、主催者としての責任を免れるわけではない。そもそも、広告宣伝業務は、競技会を成功させる重要な活動であるから、これを主体的に行うことは、「大会の開催を発起し、競技等を組織・運営」することに他ならない。

  (イ) 被告テレビ東京は、上記(ア)のとおり本件レースの組織・運営に関与し、また、主催者として、諸活動の内部分担にかかわらず競技会の管理運営について権限を有し、責任を負担するから、競技長である被告中村との間に実質的な指揮監督関係が存在する。

  (ウ) また、被告テレビ東京は、広告宣伝業務のみ行っていたわけではなく、被告富士スピードウェイとレース場使用契約を締結し、本件レース場の人的・物的設備を支配下に置いており、本件レース場に対する管理支配権をも有していた。

 イ 本件誓約書の効力について
 自動車競技中に発生した事故に基づく損害の一切について、主催者らにいかなる債務不履行や過失があろうと一切の事情を捨象して絶対的に主催者らが無答責であるとの自己責任原則は、市民社会の規律とはなり得ない。
 また、本件の場合、レースに参加したいと考える者は、故意又は過失のある場合も含めて主催者や競技長らに対する責任を追及しない旨の文言のある誓約書に署名することが一律かつ問答無用に求められ、そこには自由な意思に基づく合意は明らかに存在しない。したがって、本件誓約書の無答責条項は、このような一方的な力関係の下で押し付けられた条項であって、民法九〇条ないし信義則に照らし、効力が認められる余地はない。

 ウ 過失相殺について
 原告は、信号灯を確認しており、見込みスタートをしていない。
 ガソリンタンクが脱落したのは、衝突の衝撃が大きかったためであり、取り付け方に問題はなかった。被告らは、原告が耐火性のアンダーウェアとバラクラバ帽を着用していなかったと主張するが、原告は規定どおり着用していたものである。
 このように、本件事故が発生したことについても、損害が拡大したことについても、原告には一切過失はない。