故障原因の推定、その1

 まず、特徴的な壊れ方(摩耗の仕方)をしていたロッカーアームとリテーナ−に注目して推定する。

 故障したエンジンについていたロッカーアームを、正常なシリンダーヘッド(バルブ等付属)においてみた。下の写真は正常な位置に置いたところ。また、この状態で着目して欲しいのは、スリッパ部の傷。斜めになっている事がわかるだろうか。



 ロッカーアームの位置が正常な場合、斜めに傷が付く可能性は無いといってよい。どういう状態なら斜めの傷が付くかというと、ロッカーアームが斜めにずれた場合である。下の写真は、わざと斜めに取り付けたところ。スリッパの傷がほぼ直線になる。また斜めになると、ロッカーアームがリテーナ−の上に乗りあげる。これはリテーナ−に打痕が付いている事実と符合する。
 これらのことから、ロッカーアームは斜めにずれたと推測される。



 もう1つの事実、ロッカーアームの裏側の片方が摩耗していたこと。下の写真はロッカーアームが正常についている場合。



 故障したエンジンのロッカーアームは、下の写真のような感じになっていたと思われる。



 以上、カムカバーの壁が割れた原因を推察すると・・・
 ロッカーアームの裏側の片側が、何らかの原因で摩耗し始めた。
 これによりロッカーアームが斜めにずれてきた。
 斜めにずれた状態で運動することで、リテーナ−に異常な振動が伝わった。
 その振動が原因となってバルブコッタが摩耗した。
 摩耗することでコッタ及びリテーナはずれた。
 外れたリテーナがカムシャフトに押されてカムカバーを突き破った。


 ではなぜロッカーアームの裏側の片側が摩耗し始めたのか、次頁よりその原因を推察していく。