コンロッドメタルのSEM観察

 分解してクリアランスを測定すると、コンロッドのメタルはなんとか生きていたようだったが、下の写真の通り目視の結果荒れている部分がある。なめらかではない。そこでSEMで拡大してみた。




 観察したところは以下の部分だ。1は荒れた部分となめらかな部分の境目、2はなめらかな部分、3は荒れた部分である。




 1の部分をみた。白い部分と黒い部分があり、あまりにコントラストが激しい。いろいろ調整したのだがどうもうまくいかなかった。SEMは装置が異なったら特性も変わってくるし、特にモニターに写る濃淡と写真に写る濃淡は必ずしも一致しないので、装置の癖を知ることがきれいな写真をとるポイントとなる。限られたフィルム枚数の中、使い慣れていないSEMでトライ&エラーを繰り返すわけにもいかないので、今回はこれでよしとしよう。




 上の写真で白い部分は目視でなめらかな部分、黒い部分は荒れた部分である。荒れた部分は全てが荒れている訳ではなく、なめらかな部分(白)に荒れた部分(黒)が混ざっていることがわかった。黒い部分は何なのか、傷なのかそれとも他の金属がへばりついたものなのか、SEMでは判別できない。何がついているのかを分析するためにはEPMA(いーぴーえむえー)という装置がある。これについての分析結果については後述する。


 2の部分をみてみた。ここは目視でなめらかな部分である。SEMで拡大して見ると、結構荒れていることがわかった。これは傷がついているのではなく、オイルとメタルをなじませるため、つまり荒れた部分を溝にしてオイルを行き渡らせるために、故意に表面を荒らしていると考えられる。




 3の部分をみた。ここは目視で荒れている部分だが、1の写真と比較した結果、荒れている部分とそうでない部分が混在していることが分かっている。
 まず荒れていない部分(白)を拡大してみた。確かに2の写真とよく似た形態をしている。




 次に黒く写っている部分を拡大してみた。なんだ黒く写ってないじゃないかと思われるかもしれないが、コントラストは相対的なものなので周りの状態に影響される。従って、まともなコントラストになっているのだ。これをみると、ガサガサしている異物がついているのかと思いきや、意外になめらかであることが分かる。まだ推定だが、黒い部分が異物であり、エンジンの他の部分からやってきた金属がメタルに張り付いたものだと仮定すると、異物表面がなめらかな原因はクランクシャフトの回転によって研磨されたためではないかと思われる。




 ではこの黒い物質の正体は何なのか。次で分析する。