判決要旨全文とその構成

 ここで裁判所が公開した判決要旨を転載する。判決要旨とは、判決全文の要約である。
 ま、判決要旨を単に転載しても、裁判所用語の羅列でイマイチ理解が進まないと思うのでポイントだけ言うと、この企画的に最も重要なのは「争点7」の契約書の有効性である。あとで説明するがその解釈を自動車趣味に当てはめると実に微妙なのだ。この点をどう解釈できるのかが、本企画の最大のポイントである。
 なお本判決要旨は、古屋氏の多大なご協力のもとhttp://www.r-style.to/980503/より転載させていただいた。



この文書は、太田哲也氏が起こした「1998年富士GT事故裁判」において、
東京地方裁判所民事第5部が、2003年10月29日に下した判決要旨
です。
判決要旨とは、裁判所が子細に理由を書いた長文の判決文の要旨のみ
を端的にまとめた物で、実質の判決文と言えます。
これはその判決要旨を古屋がOCRでテキスト化し、HTMLとしたものです。

転載文責:古屋知幸



     
 

判 決 要 旨

平成11年(ワ)第25386号 損害賠償請求事件 民事第5部
裁判体:小野剛(裁判長) 春名茂 矢口順子
原告: 太田哲也
被告:1 中村靖比古(競技長)
   2 富士スピードウエイ株式会社(主催者・レース場所有者兼占有者)
   3 ビクトリーサークルクラブ(略称バイシック:主催者・レース場占有
    者)
   4 FISCOクラブ(略称フィスコ:主催者・レース場占有者)
   5 株式会杜テレビ東京(主催者(争いあり)・プロモーター・レース場占
    有者(争いあり))
   6 株式会社日本モーターレーシングセンター(略称レーシングセンター:
    プロモーター・レース場占有者)
   7 社団法人日本自動車連盟(略称JAF:公認機構)
判決言渡期日:平成15年10月29日午前10時00分 721号法廷


主文 1 被告ビクトリーサークルクラブ,同株式会社日本モーターレーシングセ
    ンター,同中村靖比古,同富士スピードウエイ株式会社,同FISCOク
    ラブ及び同株式会社テレビ東京は,原告に対し,連帯して,金9009万
    2944円及びこれに対する平成10年5月3日から支払済みまで年5分
    の割合による金員を支払え。
   2 原告の上記被告らに対するその余の請求及び被告社団法人日本自動車連
    盟に対する請求を棄却する。
   3 訴訟費用は,原告と,被告ビクトリーサークルクラブ,同株式会社日本
    モーターレーシングセンター,同中村靖比古,同富士スピードウエイ株式
    会社,同FISCOクラブ及び同株式会社テレビ東京との間においては,
    原告に生じた費用の2分の1を同被告らの負担とし,その余は各自の負担
    とし,原告と被告社団法人日本自動車連盟との間においては,全部原告の
    負担とする。
   4 この判決は,原告勝訴部分に限り,仮に執行することができる。


第1 事案の概要
 1 本件は,富士スピードウェイにおける自動車レース(平成10年5月3日開
  催の全日本GT選手権シリーズ第2戦・全日本富士GTレース大会決勝レー
  ス)のスタート前,雨中を予備走行(フォーメーションラップ)中,原告運転
  車両が他の競技車両に衝突して炎上するという本件事故が発生し,原告が全身
  に重度の熱傷等を負ったところ,原告は,本件事故は被告らの注意義務違反に
  より発生したものであり,また,被告らの注意義務違反及びレース場の蝦疵に
  よって損害を被ったと主張して,各被告らに対し,損害賠償金2億9854万
  2705円及びこれに対する本件事故の日から支払済みまで民法所定の年5分
  の割合による遅延損害金の連帯支払いを請求した事案である。
 2 前提事実
  ア 原告は,昭和57年にレーサーデビューし,4年連続してル・マン24時
   間レースに出場し,平成6年からは全日本GT選手権シリーズヘ出場するな
   どした,フェラーリ遣いの名手として知られるレーサーである。
  イ 本件レースは,本件コースを右回りに走行するもので,ローリングスター
   ト方式(スタート前に競技車両がフォーメーションラップを開始し,スター
   ト直前まで先導車が競技車両を誘導走行し,信号灯の合図によりスタートを
   開始する方式。大会特別規則により,競技車両はフォーメーションラップ中
   の追越を禁止される。)が採られた。当時のレギュレーションには,先導車
   の走行速度についての規定はなかった。
  ウ 雨中のフォーメーションラップ2周目,砂子智彦運転の競技車両と星野薫
   運転の競技車両が,ホームストレート上で接触して走路を外れ・砂子車は本
   件コースアウト側の側壁に,星野車は本件コースイン側の側壁に衝突した
   (第1事故)。
  エ 第1事故発生のおよそ12秒後,原告車が,ブリッジ付近から本件コース
   アウト側に逸走し,第1事故により停止していた砂子車に激突して炎上した
   (本件事故)。原告車は,さらに本件コースアウト側の側壁にぶつかると,
   コース上を回転しながら横切り,反対側の本件コースイン側に停止した。ま
   た,原告車のガソリンタンクが車体から脱落して炎上した。
  オ 国際モータースポーツ競技規則付則H項は,@事故発生後15秒以内に第
   1緊急消火処置を,30秒以内に第2緊急消火処置をとるべきこと,Aコー
   ス両側に300メートル間隔で,又は片側に150メートル間隔で,手動消
   火器を操作する操作員を配置することを定めている。
  力 本件レース場には,上記H項のAを満たすように消火器操作員が配置され
   ていなかった。
  キ 最初に原告車のもとに駆けつけて(本件事故発生から48秒後)消火活動
   をしたのは,別の競技参加者であった。
    オフィシャルの到着は,隊列を追走していたレスキューカーが本件事故発
   生から73秒後,緊急車庫から出動した破壊工作車が本件事故発生から78
   秒後であった。
  ク 原告は,顔面・両上下肢・気道熱傷の傷害を負った。また,後遺障害とし
   て,両眼のまぶた,まつげ,眉毛,鼻が消失・欠損し,右肩,右肘,右手,
   右手全指の中手指節間関節と近位指節間関節,右足の可動範囲が正常の2分
   の1以下,右手の握力は0キログラム,右足は下腿伸筋群壊死により自立に
   よる立位保持が困難な状態である。

第2 当裁判所の判断
 1 争点(1)(本件事故発生の原因 本件事故は先導車の急加速・高速走行により
  発生したものか)について
  (1) フォーメーションラップ開始時には,ホームストレート上にかなりの量の
   雨水が溜まっていた。
    先導車は,シケイン通過後,ほぼ一定の割合で加速して最終コーナーへ入
   り,その速度は,ホームストレートに入るあたりで時速120キロメートル
   前後に,コナミブリッジを通過するあたりで時速150キロメートル前後に
   達し,その後徐々に減速し,第1コーナー手前で急減速した。
    500クラス車のうち先頭集団は,先導車と同様に加速し,最終コーナー
   からホームストレートに入った。加速性能の劣る300クラス車(原告車を
   含む)も,500クラス車に追走するため加速して走行した。300クラス
   車がホームストレートに入るころには,500クラス車が高速走行したこと
   により巻き上げられた水煙(ウォータースクリーン)で,視界が極度に悪化
   し,前方の車体を視認するのが困難な状況になった。
    午後2時13分27秒ころ,砂子車と星野車が接触する第1事故が発生し
   た。
    原告は,前方を走行する競技車両が,シケインを通過後,強く加速して走
   行したため,これに追走して加速し,最終コーナーに入るあたりで時速15
   0キロメートル程度で走行したが,ホームストレートに入ると,激しい水煙
   で前方車両の車体の確認が困難になった。原告は,隊列を整えて前方車両か
   ら遅れずに走行するために,アクセルを全開に近い状態まで踏み込みながら,
   少なくともコナミブリッジの100メートル程度手前までは,加速を続けた。
    原告の前方5台の競技車両集団は,やや減速態勢に入っていたところ,原
   告は,激しい水煙に視界が遮られて,同集団に気付くのが遅れ,同集団を回
   避しようとして,スピン状態に陥り,同日午後2時13分39秒,その右前
   側部が砂子車の右側部に衝突した(本件事故)。
  (2) 以上に認定した事実によれば,本件事故は,先導車が,フォーメーション
   ラップ中に,シケイン通過後から加速を開始し,コナミブリッジ付近では時
   速150キロメートル前後に達する高速で走行しながら,第1コーナー手前
   で急減速したことによって,原告が,他の競技車両と同様に,視界不良の状
   態の中で,前方の競技車両に追従するために加速を強いられて相当の高速度
   に達したことから,第1コーナーの手前での先導車の減速に伴って順次減速
   を余儀なくされた前方の競技車両との衝突回避が不可能となった結果,発生
   したものと認めるのが相当である。
 2 争点(2)(被告中村は不法行為責任を負うか)について
  (1) 争点(2)@(競技車両が安全に走行できるよう,先導車の走行方法及び速度
   を適切に指示すべき注意義務を怠った過失があるか)について
    競技長は,競技車両が安全に走行できるよう,路面や競技車両の走行状況
   を的確に把握し,その状況に応じて先導車の速度等を適切に指示し,競技車
   両に危険が生じないように先導車を走行させる義務を負う。
    被告中村は,フォーメーションラップ開始前に,先導車ドライバーに対し,
   ドライで時速80キロメートル,ウェットで時速60キロメートル程度で走
   行するよう指示したのみで,フォーメーションラップ開始後,先導車が前記
   認定のような急加速・高速走行をしていたにもかかわらず,これを放置し,
   走行方法及び速度等に関する指示をしなかった。
    そうすると,被告中村は,競技車両が高速走行すれば,水煙により視界不
   良となるのが必至の状況で,先導車が前記の高速走行をするのを放置し,減
   速の指示をしなかった過失がある。
  (2) 争点(2)A(事故発生後,緊急に消火救護活動を実行すべき義務を怠った過
   失があるか)について
    競技長は,事故発生時,緊急に消火救護活動を実行すべき義務を負う。消
   火救護義務違反の有無は,本件レース場の設備を前提に,具体的事故状況に
   照らし,消火救護活動が通常必要とされる時間を超えたか否かにより判断す
   べきである。
    被告中村は,本件事故発生後,直ちに赤旗表示を指示したが,現場オフィ
   シャルに対し,出動現場を個別に指示しなかったところ,本件事故により,
   原告車,砂子車,ガソリンタンクが巨大な炎と大量の黒煙を発生し,コース
   上の視界が著しく遮られたことからすると,被告中村が原告車等の位置関係
   を正確に把握し,適切な出動場所を指示することが可能であったとするには
   疑問が残る。よって,被告中村に消火救護義務違反を認めることはできない。
 3 争点(3)(主催者は債務不履行責任を負うか)について
  (1)争点(3)@(競技長に競技車両が安全に走行できるよう先導車を走行させる
   債務があったのにこれを履行しなかったか)について
    主催者と原告との間には,本件レースの実施・参加にあたり,相互に国際
   スポーツ法典等のレギュレーションの規定に従う旨の合意(本件合意)が成
   立し,主催者は,競技車両・競技参加者の安全を確保すべき義務を負い,そ
   の一内容として,競技長をして,後続競技車両の安全走行を可能ならしめる
   ように先導車を走行させる義務を負う。
    しかし,主催者たる被告らは,上記義務に違反し,競技長をして,先導車
   を適切に走行させる義務を尽くさず,本件事故を発生させたから,原告に対
   し,安全確保義務の不履行に基づく損害賠償義務を負う。
  (2) 争点(3)A(適切な消火救護態勢を整え,かっ事故発生後,緊急に消火救護
   活動を実行すべき債務があったのにこれを履行しなかったか)について
    主催者は,本件合意の一内容として,適切な消火救護態勢を整え,かつ,
   事故が発生した際には緊急に消火救護活動を行うべき義務を負う。
    本件事故の際の消火救護活動を実行する義務については,前記2(2)で判示
   したのと同様,本件事故の具体的状況下においては,義務違反は認められな
   い。
    他方,消火救護態勢を整える義務については,H項は勧告事項であって,
   法的規範性を有するとはいえないが,ドライバーは火災によって30秒程度
   で窒息死する危険が高いとされていることを考慮すると,少なくとも通常発
   生が予想される事故において,事故発生後30秒以内に消火救助できる態勢
   を整える義務があるというべきである。
    本件レース場には,ポストオフィシャル以外に消火器操作員が配置されて
   おらず,緊急車両による消火活動をもってしても,事故現場の場所によって
   は30秒以内に消火救助できる態勢になっていなかったから,主催者たる被
   告らは,消火救護義務の不履行に基づく損害賠償義務を負う。
  (3) 争点(3)B(被告テレビ東京は主催者として債務不履行責任を負うか)につ
   いて
    被告テレビ東京は,原告の参加申請を受理して原告との間で本件合意を成
   立させ,本件レースの主催者の地位に立ち,本件レースの公式記念プログラ
   ムに自らを主催者と表示した上,同様に本件レースのプロモーターである被
   告レーシングセンターとの間で,主催者兼プロモーターとして本件レースに
   関する費用負担・収益配分にも預かり,被告富士スピードウエイとの間で本
   件レース場使用契約を締結し,従業員が大会組織委員会の組織委員となって
   重要事項の協議決定にも関与できる組織形態をとり,本件レース運営の一環
   として広告宣伝業務を行ったことを総合すると,被告テレビ東京は,実質的
   な主催者と認められる。したがって,被告テレビ東京も,主催者として債務
   不履行責任を負う。
  (4) 争点(3)C(プロモーターは,主催者と同一の債務不履行責任を負うか)に
   ついて
    本件証拠上,プロモーターは,原告との間で,直接本件合意をしていたと
   認められず,主催者らとともに同一の債務不履行責任を負うべき地位にある
   とはいえないから,プロモーターたる被告らは,原告に対し,プロモーター
   として債務不履行責任を負うことはない。
 4 争点(4)(主催者は不法行為責任を負うか)について
  (1) 争点(4)@(被告中村の使用者として使用者責任を負うか)について
    競技長は競技役員であるところ,主催者が競技役員を確保し,競技長は大
   会組織委員会によって任命され,大会組織委員会は主催者から競技の実質的
   組織の実施のために必要なすべての権能を委任されたものである。そうする
   と,主催者と被告中村との間には,実質的な指揮監督関係があるといえるか
   ら,主催者たる被告らは,被告中村の不法行為(競技車両の安全確保義務違
   反)により原告に加えた損害につき,使用者として不法行為責任(使用者責
   任)を負う。
  (2)争点 (4)A(被告テレビ東京は被告中村の使用者か)について
    被告テレビ東京は実質的にも主催者であるから,被告中村の使用者として
   使用者責任を負う。
 5 争点(5)(被告JAFは債務不履行責任を負うか)について
   被告JAFが競技会参加者たる原告に対してライセンスを発給する行為は,
  被告JAFが,FIAによって日本で唯一の自動車競技権能者として公認され
  た者として,原告に対し,国際スポーツ法典等に規定された競技会に参加する
  資格がある者として登録したことを証明する行為であり,被告JAFは,これ
  を超えて,原告が参加する個々の自動車競技会について,原告の安全を確保す
  べく主催者らを監督する義務を負うものではない。よって,被告JAFは,原
  告に対し,債務不履行責任を負わない。
 6 争点(6)(被告富士スピードウエイ,同バイシック,同フィスコ,同テレビ東
  京及び同レーシングセンターは,土地工作物の占有者としての不法行為責任を
  負うか)について
  (1) 争点(6)@(本件レース場は土地の工作物か)について
    本件レース場は,全体として土地の工作物と認められる。レース場は,火
   災事故発生の危険が常に存在し,また,消火救護設備は人の手で運営・使用
   されて効果を生じるものであるから,本件レース場が,通常有すべき安全性
   を有していたというためには,消火救護設備を適切に活用する人員が配置さ
   れていなければならない。
  (2) 争点(6)A(本件レース場に保存の瑕疵があるか)について
    通常有すべき安全性を欠いているかどうかの基準については,前記3(2)の
   認定と同様,通常発生が予想される事故において,事故発生後30秒以内に
   被害者を救助できるだけの消火救護態勢があるか否かで判断すべきである。
    本件レース場は,事故後30秒以内に被害者を救助できるだけの消火救護
   設備又はこれを使用する人員を配置していなかったから,本件レース場には
   その保存に暇疵がある。
  (3) 争点(6)B(被告テレビ東京は本件レース場を占有していたか)について
    被告テレビ東京は,同バイシック及び同レーシングセンターとともに賃料
   2000万円で同富士スピードウエイから本件レース場を借り受け,被告テ
   レビ東京も相当の費用を負担し,被告テレビ東京が借り受けた設備の中には,
   レーシングコースや観客席の他に,ポスト,緊急車両,消火器など消火救護
   に必要な一切の設備が含まれており,被告テレビ東京が主催者として本件レ
   ースの運営に相当程度関与しうる地位にあったことをも考慮すると,被告テ
   レビ東京は,本件レース場を占有していたものと認められる。
 7 争点(7)(誓約書の効力 原告が事前に差し入れた,事故が起こっても損害賠
  償を請求しない旨の誓約書は有効か)について
   原告は,本件レースに参加する際,競技参加に関連して起こった事故につい
  て,決して主催者らに損害賠償を請求せず,このことは事故が主催者または大
  会関係役員の手違いなどに起因した場合でも変わらない旨の記載のある誓約書
  を大会組織委員会に差し入れたが,同誓約書を提出しない限り,ドライバーと
  して本件レースに参加することができなかった。しかし,同誓約書の効力を文
  字どおり認めた場合には,主催者は,ドライバーの安全への配慮を故意又は過
  失によって怠り,その結果,重大な結果を伴う事故が生じた場合でも,自動車
  レースによる経済的利益を取得しながら,責任は一切負わないという結果を容
  認することになり,著しく不当,不公平である。同誓約書のうち,主催者らの
  故意・過失にかかわらず損害賠償を請求できないとの部分は,杜会的相当性を
  欠き公序良俗に反し無効というべきである。
 8 争点(8)(損害及び過失相殺)
  (1) 治療費,休業損害,逸失利益,慰謝料,物損など,原告に生じた損害額は,
    合計1億3848万8241円と認められる。
  (2) 過失相殺
   ア 本件事故発生について
     原告車が,コントロールライン通過後も1番ポスト付近まで加速し続け
    たとか,前方車両を追い越そうとしたとまでは認めることはできないもの
    の,原告は,シケイン通過後から,少なくともコナミブリッジの100メ
    ートル程度手前まで,アクセルを全開に近い状態に踏み続けるとともにギ
    アを3速から6速まで上げて加速し,ホームストレート上を時速200キ
    ロメートルを下らない速度で走行した。監視カメラの映像からの算出によ
    れば,原告の前方車両5台の速度は,速くても時速150キロメートル程
    度と認められ,原告車との速度差が時速50キロメートル程度あったから,
    原告の高速走行の責をすべて先導車に負わせることは相当でない。そして,
    ウォータースクリーンの影響で前方車両等の位置や速度が確認できない状
    況において,時速200キロメートルを下らない高速で走行すれば,前方
    車両の減速に対応することが困難であることを予測でき,原告車が早めに
    減速して前方車両5台と同程度の速度で走行していれば,本件事故の回避
    が可能であったと考えられることからすると,原告には,本件事故の発生
    について相当程度の過失があったものと認められる。
   イ 損害拡大について
     被告らは,原告の耐火性のバラクラバ帽及びアンダーウェア不着用を主
    張するが,証拠上,そのような不着用の事実は認められない。
     被告らは,取付強度不足によるガソリンタンク脱落により救護活動が遅
    延したと主張するが,他の取付方法であればガソリンタンクが脱落しなか
    ったことについての証拠はないから,原告車の取付方法がガソリンタンク
    の脱落に影響したか否かを確定することはできない。よって,この点を原
    告の過失とする被告らの主張は理由がない。
   ウ 以上を総合的に考慮すると,本件事故発生についての原告の過失割合は,
    4割と評価するのが相当であるから,前記損害額について4割の過失相殺
    を行うと8309万2944円となる。
  (3) 弁護士費用は700万円を認めるのが相当である。
    よって,被告ら(被告JAFを除く)が賠償すべき損害額は9009万2
    944円となる。


 
     



 この判決要旨、特に「争点7」には実に悩ましいことが書いてある。もう一度おさらいすると・・・

「その結果、重大な結果を伴う事故が生じた場合でも、経済的利益は取得しつつ一切責任は負わないという結果を容認することになり、これが著しく不当・不公平であることは明らかである・・・」
とあり、結局契約の効力はないとつながっていく。
 これを単純に反対解釈すると、経済的利益を求めないのなら、著しく不当・不公平とは言えない、という話になる。クラブ単位の走行会やOFF会で一山当てようという人はほとんどないし、利益が出たとしても微々たるものであるから、著しく不当・不公平とは言えず、私的自治の原則に基づき契約は成立し事故が起こっても主催者が責められることはない、という話になる。ほんまかいな。というわけで、本判決を自動車趣味にあてはめると微妙なわけだ。その「ほんまかいな」という部分が本当なのかどうなのか、検証していく。