■クラッチディスクの取り付け
 

 さて、見とれていないで早速ディスクの組み込みに移る。実はここから作業は頓挫するのである。ディスクをセットしたカバーを仮ドメしてプレートをセンターに合わせるのだが、この心出しが厄介な作業だった。センター出しの工具がなかったので目見当(スズキの整備士も目見当でやると言っていた)で合わせ、トルクレンチで均等にカバーをしめこみ、重たいミッションを人間ブリッジで持ち上げてスプラインを差し込むがきちんと奥まで入らない・・・

 わずかなずれでも入らないらしい。リトモの社長さんが「無理矢理こじっちゃだめだよ」と言っていたのを思い出す。

 何度も何度もトライするがなかなかミッションがおさまらない。時間も2時間以上費やしている。何よりもブリッジしている我々の体力が限界に近づいてきたのが最も大きな問題だ。SSTがあれば簡単な作業なのだろうか・・・?

 そしてついに我々はこれ以上やると腹筋と背筋がおしゃかになると判断し、都合よくそばにあった旋盤でSSTを作る事にした。材料はあるもので間に合わせるしかない。作業する事約30分、真鍮製のSSTが出来上がった。

 真鍮の削り出しで作られた10mmと17mmの単純な段付棒なのだが、これをスプラインに差し込んで心出しをしてからミッションを組み込む。作業は一発で終わった。今までの作業は一体何だったのだ!

 この段付棒は後に「真ん中君」という名前がつけられた。期待していた市川さんには申し訳ないがこんな単純なものなのである。ちなみに真鍮製なのであまり長くは使えそうにない。

 と言う事でミッションが納まりセルモーターなどを取り付けて各ボルトを締め込む。いやいや、ここからは作業が速い。

 そしてついにミッションは無事エンジンに取り付けられた。後はエンジンマウントをセットしてずらしたエンジンを元の位置に戻し、外したケーブル類を取り付ける。