驚異の足周り、フロントその2

 フロントのブレーキローター。薄い。フェードしかけるのも当然といっていいだろう。ハブは鉄のように見える。



 ホイール。フロント、リアともに3本締め。



 ホイールからブレーキローターまで相当の距離がある。普通はハブやスペーサーで距離を稼ぐのだが、よく見ると、ハブに見える部分は中空になっているのではないかと思われる。だとすると、これも軽量化の一環であろう。



 フロントのキャリパ。これも小さい。原付なみ。



 ここで驚愕のロアアームの付け根を見てみる。通常の場合、ロアアームの付け根はゴムブッシュをかました上でボルトで締結され、自由度が高い構造になっている。が、Nissan New Mobility Conceptでは、ロアアームの付け根が、制振用ゴムのような形状をしたものらしいのだ。さらに悪いことに、「コの字」型のフレームに取り付けられておりクリアランスもほとんど無いため自由度が非常に低い。Nissan New Mobility Conceptのサスは固いのだが、固く味付けされているのではなく、固くせざるを得なかったのだ。柔らかくセッティングすると、ロアアームの付け根の上下方向の移動量が大きくなり、最悪の場合ロアアームと「コの字」型のフレームがあたり、フレームを歪ませてしまう。「立派なサスペンションは飾りに過ぎない」と書いたのは、この構造のためだ。



 しかし、これでちゃんと走ってしまうのである。耐久性や悪路走破性に問題があるのは間違いないが、それを差し引くと機械構造的にはこれで十分といっていい。やれダブルウイッシュボーンだの、マルチリンクだのと言われるが、Nissan New Mobility Conceptを運転すると、我々はあまりに固定観念にとらわれすぎているのではないかと思い知らされる。
 話は大きく変わって、「フォーミュラSAE」という大会が年に一度開かれる。これは学生のためのレースなのだが、ここに登場する車のサスペンション構造が、過剰というか華美に近いものがある点を見て「学生達は、勝利という目標や目的達成のための手段を見誤っている」と感じている。「フォーミュラSAE」に参加される人は、一度Nissan New Mobility Conceptに乗ってみることをお勧めしたい。サスペンションにカネをかけすぎ、構造が複雑になり、結果として信頼性も大きく落としていることに気がつくのではないか。
 が、このサスペンション自体に問題が無いわけではない。特に悪路走破性は、ストロークが無い分、全くダメだろう。実際、今回指定されたコースには悪路はなく、それどころか一般市街地でよく見られる歩道の段差すらない。この段差を乗り越えると、かなりの衝撃が来ると思われるし、最悪フレームとロアアームが当たっていずれかが変形してしまうだろう。また、舗装されていない悪路も指定コースの中に入っていない。サスの性能を見越した上でコースを設定したのだろう。