力道山が所有していたというジャガーXK120、その2

 インパネ部分。う〜ん、朽ち果てて落ちている。ステアリングは標準のもので、モトリタの16インチのようだ。




 ウッドパネルでできているインパネ。落ちてしまっていた。




 足下はどうなってるんだろうと見てみると、こんな感じ。ここでボディーの色をみてほしい。緑色である。先ほど正面から見たときは黒っぽかったのだが・・・変色してしまったのだろうか? しかし、緑が黒へ変色するかなあ。




 半分木製のドア。トリムはタッピングビスでドアの中にある木の骨に留められているとのこと。



 タイヤはBSのだった。ロゴからして古い物だが、力道山が乗っていたころのタイヤかどうかはわからない。




 フロントガラスが割れていたことに気が付かれた人も多いと思う。これは台風で瓦が落ちてきて割れたとのこと。おまけにこの車の屋根も大きく凹んでしまっている。





 当HPには車に関するたくさんの問い合わせが寄せられ、私も可能な限りこたえている。が、この車に関する問い合わせには容易に返答できない。仮にオヤジが売って買い手がレストアしたとしても、買い手はカフェレーサー気取りで車を転がしてどっかの店に寄っては紅茶をすすり、車に関するうんちくを語ってくだを巻く。例の如くガレージは原寸大ジオラマで、使いもしない工具・読みもしないNAVIやらCGやらが棚に整然と並べてある。そしてエンスー気取りで何かのイベントに出る。で、車を転がすのに飽きたら転売し、それを買うのは同類のヒヒ爺・・・という情景が容易に想像されるからだ。
 例えばこの車はル・マン用マシンとしても活躍したが、今から50年も前の話を自分が当事者であるかのように語る、なんてことに使われるくらいならこのまま腐らせた方がいいと思っている。馬鹿げた連鎖を断ち切らなければ、もっとダメになるだけだからだ。イギリスの自動車産業のように。
 ジャガーという会社がああいう状態だということも考えあわせると、「滅びの美学」という世界に類を見ない感覚を有する日本で人知れず朽ち果てるのも、この車にとっては幸せなのかもしれない。普段から旧車の保存・復活を願ってやまない身であってさえも、容易に想像される情景を考えると腐らせるのが最善という気分になる。あ〜、現状を悲観しやけくそになって人類滅亡を望むマッドサイエンティストみたいだ(笑)。

 ル・マンねえ。ル・マンに出場するのは無理としても、「カフェレーサーを気取りたいから所有したい」というのではなく、「実際に24時間耐久をやったことがある・だから自分が所有するにふさわしい」と説明できる人がいれば、この車に対する返答も考えよう(ここ参照)
 この車を使って何がしたいのか、現状はどうか、自分の考える理想は何だ、理想に近づけるための課題は何か、理想が実現されるとどんなメリットがあるのか、理想に近づけるために自分たちは何をすべきか、また今まで何をやってきて、どんな結果を残したのか、その記録はどこにあり多くの人に対して還元できる状況になっているのか、実際のところどれだけ多くの人に影響を与えてきたのか・・・ということも理路整然と語ることができないとダメ。それができないようでは、この車を持ったとしてもカフェレーサー気取りで紅茶をすするのが精一杯だろう。以上のことができて、情熱と実績と将来の方向性を示すことができていると認められて、初めて返答の検討に値する。XK120に限らず、そもそも趣味の車とはこうあるべきなのだ。


 ちなみに・・・08年9月6日、「エイベックス」の創立20周年記念イベントの一環として「ジュリアナ東京」が一夜限りで復活した。荒木師匠やバブル青田の両名も参戦。ただし場所はもともと存在していたところ(ジュリアナは六本木あたりにあったというイメージがあるが、実際は田町駅付近)ではなく、「ディファ有明」というイベントホールだった。



現代遺跡の1つ 08年時点でのジュリアナ東京跡地


 ということもあって、ジュリアナをwikiで何の気無しにひもといてみた。すると、一番最後のあたりに「主な顧客」というところがあり、大のジャガー好きがリストアップされていた。いや、別にどこへ行こうと、何しようと勝手なんだけど、でもねえ・・・「自動車文化とは、踊り狂うことと見つけたり」とかくだをまいてそうで・・・。やはり、この車はこのまま人知れず腐らせるべきだとの思いを新たにした次第だ。