マンガの話

 実は嫁さんが漫研出身のため、マンガには少々詳しい。ここではどういうマンガが好きなのかを徒然なるままに書いてみたい。なお内容までは踏み込んでないのでご安心を。

 好きなマンガは、北斗の拳、沈黙の艦隊、そしてガラスの仮面。一方、国民的支持を得ているマンガでありながら、我々夫婦の間で共通して評価の低いマンガが、ドラゴンボールと名探偵コナン。なぜかというと、ドラゴンボールは「ライバルのインフレ化」が激しすぎるため、名探偵コナンはストーリー展開が刑事訴訟法を全く無視しているので見るに耐えないというのがその理由である。
 ここでちょっと解説を。「ライバルのインフレ化」という言葉がでてきたが、どういう意味かおわかりだろうか。特に格闘モノでよく見られるパターンなのだが、主人公がライバルAと戦って勝利する。ストーリー展開上次のライバルBが現れるが、BはAより強いのである。そしてBよりCが、CよりDが・・・とどんどんライバルが強くなっていく。これを「ライバルのインフレ化」と称す。あるマンガでは、ライバルの身長がどんどん大きくなっていき、他のマンガでは「1万人対一人の喧嘩」みたいにライバルの数が多くなったりする。悪いことに一度インフレスパイラルにはまってしまうと、なかなか抜け出すのが難しくなる。パターンが見えてしまって面白くないのである。

 ここでライバルのインフレ化をキーワードにして、各マンガについて語っていこう。まず北斗の拳。語るまでもないほど有名なこのマンガは、もうインフレなんて無関係。ライバルのデノミネーションの仕方がすごいのだ。画期的ですらある。登場人物の大きさの設定なんて無いに等しく、黒王号は道産子くらいの大きさのときもあれば、像ほどの大きさの時もある。山のフドウに至っては、善人になるに従って身長が縮んでいき、最初は推定10mほどあったものが、ラオウと戦って死ぬときに至っては2mくらいまでに小さくなっている。もう滅茶苦茶である。この手のマンガを描く際に作者に照れがあってはいけないと言われているが、にしても堂々とやっているところがすごい。

 当HPを見ている人の多くは男性と考えられるため、沈黙の艦隊について熱く語るのは割愛しよう。となると、残るはガラスの仮面。なんじゃこりゃ、と思われる方の方が多いと思うが、それもそのはず少女マンガなのである。が、普通の少女マンガではない。「ど少女マンガ」、「スポ根」、「合法的麻薬」・・・と言われるほどの恐るべきマンガなのだ。1976年に連載が開始されて以来、まだ最終回を迎えていない。この最終回を読むまでは絶対に死ねないマンガである。連載期間の長いマンガにはこち亀があるが、こち亀は基本的に数話読み切り型であるため、一概に比較は出来ない。
 概要を述べよう。絵柄は我々男が想像する通りの、花びらが散ったり目に星があったりする典型的というか古くさい少女マンガの絵だ。「ベルばら」と似たような感じだと思っていただいていいだろう。内容だが、舞台は横浜。周囲からは何の取り柄もないと思われている主人公(北島マヤ)と、その主人公の持つ演技に対する能力がただ者ではないと認める天才女優(姫川亜弓)の双方が切磋琢磨し、幻の舞台「紅天女」の主演を演じるため競い合うという話である。こう書くとなんだかなあという感じなのだが、読者の予想を超える試練の山と、考えもつかない展開で困難を乗り切る話が連続するため読み出したら止まらない。「スポ根」、「合法的麻薬」と言われる所以である。ストーリーの展開を追うのもさることながら、こんなストーリー展開を考え出せる作者の頭の中身はどうなっているのかと不思議に思えてくるので2度楽しめる。
 実はガラスの仮面とよく似た構成をもつ少年マンガが存在する。それは「ヒカルの碁」。これならば読んだことのある人は相当数いるのではないだろうか。進藤ヒカルが北島マヤで、塔矢アキラが姫川亜弓、神の一手が紅天女だと思っていただければ話は早い。ヒカルの碁の場合、1998年から2003年の約5年間連載されたが、ガラスの仮面は20年以上続いている(休載期間を除く)。ヒカルの碁のノリを凌駕する面白さが20年連続したら、そりゃ読み出したら止まらないなんてもんじゃない。姫川亜弓が巨大化していくみたいなライバルのインフレ化に頼ることなく、ひたすらストーリー構成の巧みさだけで面白い話を20年に渡って作れるというのが素晴らしい。まだ読んだことのない人は、一度読んでみよう。ただし、1冊試しで買ったらもう終わり。残り40巻以上を買うハメになってしまう。

 あ〜、マンガの文法なり方法論を書こうと思っていたのにヨタ話で終わってしまった。ちなみに・・・ガラスの仮面が設定されていた当時の横浜は凄かった。明訓高校が甲子園で優勝しまくり(ドカベン)、県立西高では岡ひろみとお蝶婦人がテニスで大活躍(エースをねらえ)していたのだ。横浜黄金時代であった。