弁護士さんと話をした際アドバイスを受けたトラブルを避ける誓約書について考えてみたい。お約束だが、検討した誓約書をもとにしてOFF会なり走行会を企画して事故が発生し、裁判で訴えられ敗訴しても責任は一切負えない。
下記の誓約書は、本事案で無効と判断されたものだ。最初に現状をご覧いただこう。
この参加誓約書は、1998年に実際に使われた物を再現した物です。
書き込み欄などを省略していますが、本文は原本そのままです。
1998年度全日本GT選手権シリース
参 加 誓 約 書
AGREEMENT ON ENTRY
大会組織委員会 御中私達は本シリーズ、各大会特別規則並びに国際スポーツ法典、同付則及び国内競技規則の規定に同意致します。
また競技参加にあたり関連して起こった死亡・負傷・その他の事故で私達参加者及びドライバー・ピット要員及び車両等の受けた損害について、決して主催者及び競技役員・係員・雇用者(コース所有者を含む)・他の競技者(エントラント・ドライバー・ピット要員等)、並びにGTアソシエイションに対して非難したり責任を追及したり、また損害の賠償を要求したりしないことを誓約致します。
このことは事故が主催者または大会関係役員の手違いなどに起因した場合であっても変わりはありません。
また、ドライバーは参加レースについてしかるべき適格の競技許可証の所有者であり、参加車両についてもコースまたはスピードに対して適格であり、かつ競走が可能であることを誓います。
また大会を対価を得て公開し、及びテレビ・ラジオ、映画、写真、録音等の対象にすることはすべて私共及び大会主催者が加入するGTアソシエイションの権限の下にあることを承認致します。
なお、私達の過失で当該レース場の所有にかかる施設機材、車両等に損害を与えた時は、その損害について弁償致します。
また、私達は本シリーズ各大会に参加するに当たり、別紙の通りすでにレースに有効な保険に加入していることを申告致します。
参 加 申 込 者
エントラント名
代 表 者 署 名
ドライバー署名
該 当 サ ー キ ッ ト
(参加大会に捺印)
次に主催者側が一方的な利益を得ない場合の誓約書(改訂案)について検討する。最初に弁護士さんからのアドバイスと、私なりのアイディアを紹介しておきたい。
弁護士さんのアドバイス
「重過失については責任を取る。その他の軽過失については相互免責とする」という一文を誓約書にいれればよいのではないか。そうすると一方的な条件とはならないため、誓約書として成立する可能性が高まる。」
このアドバイスは、プロのレースでの誓約書には付け加えておくべきことだろう。下記の例はアマチュア向けなので、本事項は付け加えないことにする(経済的利益を追求しないアマチュアでは、誓約書の有効性が認められるため)。
私なりのアイディア
10年HPをやって分かった事を織り交ぜたい。それは「こちらとしては理路整然と書いたつもりでも、相手によっては感情的もつれで理解しようとしなくなる」という点だ。「感情的もつれをなくすような書き方をするのが対策」と思った人、はずれ。逆をいきたい。極端な話、理屈よりも手よりも感情がまず先に出るという人間は誓約書を利用して参加させないというのが私なりのアイディア。こういう人間がいると、万一の事があった際、話の収拾がつかなくなるからだ。いいやり方ではないが、やむを得ない。
なぜやらざるを得ないかというと、テスト(入試)がないためである。通常の社会では、テストにより能力の不足している人間・不向きな人間は淘汰される。ところが自動車趣味の世界では、誓約書があってもテストがないから能力のある人もたくさん集まる一方で、文句ばっかり言って何もしないやつとか困った連中も一緒にきて、事が進まなくなる。
以上を踏まえ、アマチュア用の参加誓約書(案)を書いてみた。くどいようだが、検討した誓約書をもとにしてOFF会なり走行会を企画して事故が発生し、裁判で訴えられ敗訴しても責任は一切負えない。
走行会名、OFF会名称等
アマチュア用参 加 誓 約 書(案)
AGREEMENT ON ENTRY
大会組織委員会 御中1.私たちは万一事故が起きても
太田選手のように、ぐだぐだ言いません。お互い恨みっこ無しで臨みます。*1
2.私達は本シリーズ、各大会特別規則並びに国際スポーツ法典、同付則及び国内競技規則の規定に同意致します。
3.また競技参加にあたり関連して起こった死亡・負傷・その他の事故で私達参加者及びドライバー・ピット要員及び車両等の受けた損害について、決して主催者及び競技役員・係員・雇用者(コース所有者を含む)・他の競技者(エントラント・ドライバー・ピット要員等)に対して非難したり責任を追及したり、また損害の賠償を要求したりしないことを誓約致します。
このことは事故が主催者または大会関係役員の手違いなどに起因した場合であっても変わりはありません。
また、ドライバーは参加レースについてしかるべき適格の競技許可証の所有者であり、参加車両についてもコースまたはスピードに対して適格であり、かつ競走が可能であることを誓います。
また大会を対価を得て公開し、及びテレビ・ラジオ、映画、写真、録音等の対象にすることはすべて私共及び大会主催者の権限の下にあることを承認致します。
なお、私達の過失で当該レース場の所有にかかる施設機材、車両等に損害を与えた時は、その損害について弁償致します。
また、私達は本シリーズ各大会に参加するに当たり、別紙の通りすでにレースに有効な保険に加入していることを申告致します。
4.私たちは「平成11年(ワ)第25386号損害賠償請求事件」の判決で示された誓約書の有効性の基準について理解しており、本大会ではこの誓約書が有効であると認めます。*2
5.「平成11年(ワ)第25386号損害賠償請求事件」では原告の過失割合が4割にも達したことから、私たちは裁判で争ったとしても主催者に対し勝つ見込みがないことを認識しています。*3
6.競技中に死亡した場合は生命保険から保険金が給付されますが、怪我や物損に関しては損害保険から保険金が給付されないため、自己資金で対応しなければならないことを認識しています。*4
私たちは、以上の項目に対し納得した上で参加します。*5
参 加 申 込 者
エントラント名
代 表 者 署 名
ドライバー署名
該 当 サ ー キ ッ ト
(参加大会に捺印)
*1に関しては、ホントひどいことを書いているのだが(太田選手ごめんなさい)、冷静に考えて欲しい。この一文を見てカチンと来た人がいると思うが、今は事故も何も起こっていない状態である。一番冷静でいられる状態でカチンとくるような「瞬間湯沸かし器」が、走行会で事故したり友人がトラブルに巻き込まれたりすると「大火事」になって手がつけられなくなるのは想像に難くない。*1を見て怒り出すような人は、気分を害してこのOFF会なり走行会に参加しないだろう。初手で葬り去ることこそが、最大のトラブル防止策となる。まともなやり方ではないが、やむを得ない。司法制度改革で法曹が増え、近い将来日本も何かあれば裁判・裁判ということになりかねない状況にある。トラブル防止のため、なりふりかまっていられないのである。
もっとも競技で勝とうという人には瞬間湯沸かし器くらいの激しい感情がなければならないのも事実。しかし、他人を蹴落とし・自分が蹴落とされてきた世界に生きた人ならば、真意を分かってくれるだろう。
*2、*3はほとんど脅迫である。「平成11年(ワ)第25386号損害賠償請求事件」と書いているだけでは読み手に全然分からないと思うので、別紙で裁判の経緯と判決の解釈について書いておくのがいいと思う。
*4、*5は念押し。
以上、太田裁判が和解したことを受けて、今までの経緯の整理・判決文ではみえてこない裁判の真実、我々が取り組むべき事・覚悟すべき事についてまとめてみた。みなさんも今一度読み直して、自分はどうすべきか考えて欲しい。