トライアルのデモ

 ホンダがトライアルのデモをやっていた。トランスポーターがあるのはもちろん、荷台をも壁代わりにしてアトラクションを行う。この壁を難なく登っていくのだ。




 静止画像なのでわかりにくいが、後輪を上げたまま制止しているのではなく、後輪を上げたまま走っている。今回のアトラクション一番の見せ場である。




 アトラクションをやっているのは、ライダーズスクールの先生であり現役のレーサー。曲芸を行うために練習をして曲芸ができるようになったのではなく、巧く走るための訓練を日々積み重ねた結果、いつのまにか曲芸もできるようになっていたという感じである。
 ライダーの後ろにいる、「のっぽさん」みたいな「唐沢俊一」みたいな人の司会も喋りが非常に上手く、いい味出していた。




 今回のミーティングの中で、このアトラクションが最も「俺はこうしたい」という意志を感じた出し物だった。かいつまんでいうと、「バイクでこんなことができるなんて面白いでしょ。興味を持ったらトライアルに挑戦してね。乗り方はここで教えてあげるよ」というメッセージがつまっており、トライアル人口の増加を狙ったものなのだ。人口が増えるということはメーカーが儲かるという話になる。またオリンピックを見てみると、金メダル数の多い国は概して人口の多い国である。これは底辺が広いから、より高いレベルの人が入る確率が高いことを意味している。従って底辺拡大には意味がある。しかし私はこうも考える。底辺を広げ人口を増やした上で、能力のある人に絞り込むシステムがあるため成立する話。これがないと「お荷物」が増えるだけではないのか。お荷物が腐ったミカンとなり、上を目指す人の足を引っ張るのではないかと。トライアルとは異なり、車の底辺は既に十分に広いのだ。

 底辺が増えれば車が売れて金が儲かる、レースで優勝すれば名誉が与えられる、もっと言えば不向きな人は淘汰される・・・こんなシステムは自動車趣味の世界にはほとんどないし、何らかのものを設定することも難しい。地位も名誉も財産も権力もなにもない世界で、高いモチベーションを保ち続けることのできる人間にあらかじめ絞り込むことが発展のポイントであり、だらけないポイントなのではないか。今回のミーティングを見てつくづくそう思うのである。