走査型電子顕微鏡(SEM)とは


 走査型電子顕微鏡(SEM、せむ)は、電子顕微鏡の中で最も一般的なものである。テレビのニュース等で電子顕微鏡写真を見たことのある人も多いと思うが、それらのほとんどがこのSEMによって撮影されたものである。
 原理は、電子線をサンプルに向けて発射したときにサンプルから放出される二次電子というものを検出して影像化するのだ。二次電子はサンプルの傾きや凹凸、電気伝導度の違いによって放出量が異なる。その放出量の「多い少ない」を「濃淡」=「白黒」に変換して画像として見えるようにする。だから電子顕微鏡の写真はいつも白黒写真なのである。
 電子顕微鏡のメリットはたくさんある。まず倍率が高いこと。5万倍くらいはいける。反対に光学顕微鏡では光の波長が長いため、倍率には限界がある。また倍率を高くすればするほど焦点深度が浅くなるため、一点にピントがあってしまうとその手前・奥の物体のピントがぼける欠点や、ハレーションを起こしやすいという問題もある。SEMにはそれらの欠点がないのだ。欠点をあげるとすれば、観察するためには真空にする必要があることだろうか。




 この写真は、今回使用したSEMである。写真の左に筒が立っているが、これが電子線を発射する電子銃、中央あたりにモニターがみえるが、ここに像が写るのだ。

 余談だが、SEMを借りるのにちょっとした障害があった。借りたところはもともと中小企業向けに装置を開放している公営のところなので、個人に貸してくれるかどうかがまず疑問であった。結局その点はあっさりとクリアできたのだが、予期せぬところで根ほり葉ほり聞かれた。その意外な部分とは・・・「企業での研究対象を個人が持ち帰ってここで分析し、その結果をもとにして金儲けをしようとしているのではないか」という疑念であった。確かに昨今このような事例があり、問題となっている。もしそうだとしたら、関わりたくないという話だったのだ。もちろんこれは趣味の世界の話よ、ということで理解してもらい一件落着。めでたく貸してもらえることになった。賃貸料は、1時間350円! はっきり言って破格の安さである。十分に調べたわけではないが、ひょっとすると国内最安ではないだろうか。私も広島県内の各種研究機関で顔の効くところをあたったのだが、1時間5000円とか結構高くて自腹を切るには痛い価格ばかりだったので、非常に助かった。