その他考察

 この裁判に関連することで最も残念だったことは、本裁判の自動車雑誌での報道のされ方であった。私も全てをみたわけではないので当然抜けもあるのだが、「この判決は、トッププロではない素人の我々にとってどういう意味を持つの・どうなるの・どうすりゃいいの」の部分があまりに書かれていなかった点だ。読者を「自動車趣味の人」とか「モータースポーツ好きの人」に想定している雑誌の場合、この部分がないと記事としての価値が落ちる。もし本件に関し自動車雑誌業界内で「事実を伝えるのみにとどめて後はだんまりを決め込む」という拘束力のない申し合わせがあったのならそれはそれでいいと思う。普通に考えると「ジムカーナや走行会の主催はするな」という後ろ向きの答えしか出ないはずだからだ。それじゃあ夢も希望もないので、取り上げるのはあえてやめておくというのは妥当な結論だと思う。しかし、もしこのような検討過程がないまま「太田選手、勝ってよかったね」で済ますようでは自動車専門の本としては、ジャーナリズムとしてのつっこみは足らないし何の役割も果たしてはいない。
 ちょっと話が横道にそれるが、本件にかかわらず「自分達は何を主張して、どうしたいのか、そのために何をするのか、実行する上での課題は何でどうやって対処するのか」の部分がないため読んでいてフラストレーションの溜まる記事が他のジャンルの雑誌と比較して自動車雑誌は多すぎる。ついでに言わせてもらうと、そういう手本となる記事がないからこそ、自動車趣味のレベルアップが果たせていないのではないだろうか。



 今まで「なーなー」で突き進んでいたことが、本裁判によってかなり明確化されてきた。「知らぬが仏 & 今まで事故が起こらなかった、だから今後も起こらない」で突き進むノリがないと何も挑戦できないのも事実である。しかし、これからはそう簡単にいかなくなるようだ。ちょっと考えただけで、いろいろな問題が噴出してきた。太田裁判によりパンドラの箱が開けられたのだ。この問題提議がいいことなのかどうかは、正直言って私には分からない。


PS 自動車雑誌主催の走行会で、参加者側にどんな契約書・誓約書の提出を求めるか注視していきたい。もしFISCOと同じ趣旨の契約書・誓約書であるなら、本裁判の結果を知った上で良くも悪くも記事にしておきながらその教訓が全く生かされていないことになる。しかし故意に不備(無効)な契約書・誓約書を作り、いざ問題が発生した場合自らを取材対象にして問題提議を行っていくつもりであれば、よい取り組みだと思う。