判決文から考える安全なレース(案)及び原告・被告として勝訴する方法(案)

 今回の特別企画では、「素人の我々にとってはどういう意味を持つの・どうなるの」という点までを書いてきた。最後は「どうすりゃいいの」だ。しかし、これが本当に情けない案しかない。誰か補完して〜。


判決文から考える安全なレース(案)

 以下は判決文から考えられる案であり、実行が難しいものがあるかもしれないし、あたりまえのことや他のよい手段もあるはずだ。またこの案を実行して事故が起こっても責任は負わない。

1.パイロンコースで行う
 パイロンコースは広い場所にパイロンを立て、そこを起点に曲がったりするため、普通のサーキットのような道がない。そのため壁が存在しないし基本的に1台づつの走行になるので激突事故が発生しにくい。なお当然のことだが、これはジムカーナを想定している。
 また事故がおこった場合、コースをショートカットして事故現場へいくことができる。通常のサーキットの場合は、最悪の場合コースをたどらないと事故現場へ行けないが、パイロンコースは直線で進むことができるのだ。そのため短時間で事故現場へと駆けつけることができる。富士事故裁判の判例からすると、1.事故発生後15秒以内に第一緊急消火措置を、30秒以内に第2緊急消火措置をとるべきこと・・・等と書かれている。これを満たすには通常のコースでは、コース沿いに消火班を置く必要がでてくるが、ショートカットできるパイロンコースの場合1カ所でカバーできる可能性が高い。さらにパイロンコースには通常倒したパイロンを起こすための人がスタンバイしているので、その人に救護・消火の役割を兼務してもらえば、余計な人手をかけずにすむ。

2.シケインをもうける
 激突事故の可能性を低くしても、それだけでは横転事故を防ぐことはできない。火災という面で考えると、ガソリンの漏れ出す可能性の高い横転事故の方が危険であるともいえる。そのためまずそうなところには、シケインをもうけて減速させる。

3.完熟歩行と安全確認の徹底
 横転事故は、スピードの出しすぎだけでおこるものではない。コース上に存在する異物に乗り上げて発生する場合も考えられる。そこで完熟歩行時にコース上のゴミ掃除を徹底させると同時に安全確認をしっかり行い、安全意識の高揚をはかる。次項の話にもつながるが、これは参加者に安全を確認させることで、いざというとき「あんたも不備のないことを確認したでしょ」と切り返し過失相殺するための口実にもなる。

4.コンディションの悪いときはレースを行わない
 最後になったが、これが基本中の基本か。富士事故ももとはといえば悪天候が原因であった。



判決文から考える原告・被告として勝訴する方法(案)

 想定としては、クラブで走行会を主催する場合である。その際、利益はほとんど出ないし、利潤は追求しない。安全上の設備はサーキットに用意されているもののみである。この状況で重大事故が発生してしまった。以上の前提条件をもとに、判決文から考える、原告・被告として勝訴する方法(案)を出してみた。


案1.証拠を押さえておくためのビデオカメラを設置しておく。
 富士事故裁判の判例からすると、原告が勝訴するには被告側の過失を原告が証明する必要がある。と同時、原告が一方的に証明するだけで、契約を守らない債務者が証明責任を負わないのは不公平であるという判例もあることから、債務者である被告が「自分に責任はない」と証明する必要もある。つまり両方に立証する必要が生じ、立証できない側が負けるのだ。
 従って、当たり前のことだが勝訴するために重要なのは自分に有利な証拠をたくさん持っていることである。そのためにはレースを撮影し証拠を残すビデオカメラの設置すること、車載ビデオカメラの取り付けと撮影、録画済みテープの提出をレギュレーションとすることが最もコストのかからない有効な手段であると考えられる。


案2.死んだとしても、自分の行為に納得できる人間だけでレースを行う。
 タイトルとずれてしまうのだが、恐らくこれが究極の答えだと思う。「事故が生じても主催者は一切関知しない」という契約や誓約が認められない以上、主催者としては責任の回避手段がない。責任回避手段がなく賠償金額も大きいとしたらレースなど主催できるはずもない。では何もするなとでもいうのか・・・しかし、事故が生じても競技参加者が裁判所に訴えでなければ、また刑事事件にもならなければとりあえず大きな問題は発生しない。契約書がなくても、レースに参加するという自らの犯すリスク、即ち自分の行為と限界点、主催者側の安全対策を冷静に分析し十分勘案した上で、全ての行為は自己に責任があると納得できる人のみ集めれば大丈夫のはずである。平たく言えば、何があっても感情的しこりを残さない人である。ただし、遺族は納得しないリスクも存在するのだが・・・
 余談になるがそんなことが果たしてできるのか。かなりクローズドな世界では可能になってくると思う。前にも書いたがAZ-1を例に例えると、日本の総人口とAZ−1の現存台数を勘案すれば、AZ−1オーナーになれる人は1万人に一人の割合となる。1万人に一人なら、上記のような人を集めることが可能なはずだ。が、そうは言うものの残念ながら今はまだ十分に達成されていない。すぐ頭に血の上る人、あいつは好きだ嫌いだという人、バカにされたと嘆く人、対案もなく文句ばかり言う人がいるのも事実である。そういう人がいると、何かあった場合必ず建設的でない文句をつけてきて話が進まなくなる。が、いずれ淘汰されると考えているし、そうでなければレベルアップしない。まずはAZ−1で取り組み、可能であることを証明して他に広めるしか手がないのではないか。


案3.保険を掛ける
 これまたタイトルとずれてしまうが、今まではとにかく裁判に訴えられないようにする方法、訴えられても絶対に勝つ方法を考えてきた。ここでは少し視点を変えてみる。刑事裁判になり実刑ではなく執行猶予がつけばOK、民事裁判で賠償が請求されても保険でまかなえればOKとするのだ。サーキットでの事故は刑事責任が問われることはないと思われるので、その点は多分大丈夫である。残るは民事。しかし、そんな保険が存在するのだろうか。仮に存在しても参加費に跳ね返ってくるので、良い案ではない。


 以上種々の案を考えてみたが、即効性がない、コストが上がるなどの問題もあるため良い案ではない。本裁判の判決を勘案して、何かもっといいアイディアを出してくれないものだろうか。