アミド硫酸によるサビ取りの問題点と解決策

 その問題点とは、アミド硫酸から取り出して放置しておくと、またサビが発生することだ。取り出した後に十分水洗いしてアミド硫酸を取り除けば大丈夫ではないかと思われるのだが、水洗いでは取り除けないのかやはりさび始める。アミド硫酸は酸性だから、アルカリ性である石鹸で洗って中和すれば問題なくなるのではないかと思ったが、ダメだった。やはり全てのアミド硫酸を中和できず、程度の差はあれサビがわき始める。



 アミド硫酸でサビをとったらまたサビが発生するという問題の解決策をトライアンドエラーでいろいろ試したところ、以下のようにするのが一番効果があった。極論すれば、アミド硫酸でのサビ取りって意味があるの?という対策だ。

1.サビが発生したテストピースを再度アミド硫酸につけて、サビを落とす。
2.サビが取れたら水洗いした後に、サビ取り剤10倍希釈の液につける。
3.サビ取り剤10倍希釈の液から取り出し、水で洗わずにそのまま乾燥させる。
 「なんだそりゃ、そうするしか手がないんだったら、最初からサビ取り剤10倍希釈で全てサビを落とせばいいじゃん」という話である。
 この処理を行った結果が下の写真。最初はアミド硫酸飽和水溶液で処理したテストピース。



 次はアミド硫酸飽和水溶液10倍希釈で処理したテストピース。



 以上のサンプルを見ると、確かにサビは再発生しないが、全体的に黒ずんできた。黒色をした鉄の代表的化合物は2つある。1つがいわゆる黒サビ、もう1つが硫化鉄だ。アミド硫酸につけると黒サビが発生するとは思えない。一方硫化鉄だが、アミド硫酸には硫黄の成分が入っているため、考えられなくもない(硫化黒変)。このあたりは表面分析ができていないので、何とも言えない。両方とも間違っているかもしれない。




 以上を踏まえた上で、サビ取り剤10倍希釈で処理したテストピースはどうなるか見ていく。再度の復習となるが、取り出した直後は黒ずんでいる部分があった。



 黒い部分を除去しようとしてアミド硫酸飽和水溶液に漬けたら、黒い部分は取れたが全体的に黒くなってしまった。



 そこで再度アミド硫酸飽和水溶液に漬け、さらにサビ取り剤10倍希釈に漬けてそのまま乾燥したら、以下のようになった。最も黒ずみが少ない。



 次頁では、今までの実験結果をまとめる。