粗取り〜仕上げ〜組立〜完成




 まずは縦テンプレートを定規にしてマジックでウレタンに罫書く。これをカッターで切り出し、ゴム系接着剤で接着し積層する。残存する下部サポートとも接着しよう。積層の際は両面に接着剤を塗り、数分乾かしてから押し付けると強力に着く。プラハンマーなどで軽く叩いてやるのも有効だ。その後、元のクッションを参照しながら横テンプレートを基準にほぼ最終形状まで削り込んでいこう。バランスを取る意味で、状態の良かった反対側も同様の加工を行なう。カッターはすぐ切れなくなってくるので、ブレードをこまめに交換して切断面を鮮やかに保とう。



 仕上げには木工用のヤスリを使う。図のような鬼目タイプがよいだろう。プロの椅子屋さんはチーズのおろし金を使うという話を聞くが、そちらも良く削れるという。



 わりと簡単にここまで仕上がる。カドが残るとスキンを被せても判ってしまうので、なるべく丁寧な作業を心がけよう。完了したらシートフレームの内側面を荒らしてゴム系接着剤でサイドサポートを固定しよう(外側面はスキンのベロが滑り込むのでNG)。こうするとクッションのズレがなくなり、サポート性や耐久性が向上するのだ。



 建築用のガンタッカーでスキンをシートフレームに打ち付ければ完成。ガンタッカーがなければ短い木ネジで固定してもよいだろう。もう、げんこつで押しても凹んだりしない。スキンに、元のシワの痕跡が少しだけ残るが、これは致し方ないところだ。
 試運転すると、サイドサポートのプロファイル自体は変更してないのに非常にタイトになっていることに気付く。これは硬いウレタンのせいでクッションの変形量が少なくなったためだろう。「シート」というよりクルマに人間を固定する「マウント」といったほうがしっくりくる。コーナーでは程よく体をサポートしてくれるので、マシンコントロールに専念できてとても良い。シートからのキックバックも強く、クルマの状態が把握しやすい反面やや乗り心地が悪化する。
 助手席用とするには少々硬いと思われ、うっかりするとパセンジャーが酔ってしまうかもしれない。助手席を修復する際にはウレタンは#4あたりを使用することをお勧めしておこう。