AZ−1のマスターシリンダーの歪みを計測する
歪みの計測に使ったのが「ストレートエッジ」と呼ばれる鉄製の棒。鉄の棒なのだが、1万円くらいする。
これにAZ−1のマスターシリンダーを当ててみた。
ちょっと隙間ができているのがわかるだろうか。
隙は0.15mmほどあった。
ちなみに、ツインカムワークスやシングルカムワークスは、隙が0mmだった。AZ−1のは歪んでいたわけだ。
前頁で紹介したブレーキマスターに取り付けた時の隙が0.2mmとか0.4mmだったので、ストレートエッジを使った計測結果は隙が狭すぎるように見える。が、ブレーキマスター自体に平面が出ておらず、どうやっても0.2mmの隙ができる考えれば、0.4mmー0.2mm=0.2mmとなり、ストレートエッジを使って計測した結果である0.15mmとほぼ一致する。
再度まとめると以下のようになる。
1.ブレーキフルードが漏れる直接の原因は、マスターシリンダー内のシール類の設計不良である。
これは、ツインカムワークスを含む軸(ピストン)径が13/16インチのもの全てに共通する。
2.ブレーキフルードがブレーキマスターにまで漏れ出すのは、マスターシリンダーが歪んでいる(平面が出ていない)ためである。これはAZ−1に非常に多く見られる現象であり、マスターシリンダーの製造不良品と考えられる。
3.AZ−1のブレーキフルード漏れが途中で止まるのは、シール類が膨潤することで適切にシールできるようになるためと考えられる。
対応策は、対策品のマスターシリンダーの交換が最も効果的と考えられる。なお現在は対策品のマスターシリンダー単品は出ず、ブレーキマスターとセットでの販売となっている。
以下余談である。
ブレーキフルードの漏れといい、シフトが入りにくいことといい、ワークスでは発生しない現象がAZ−1では当たり前のように起きている。しかも解析を重ねると、その原因は不良品もしくは「不良までの限度いっぱい品」であった。となると、不良品を選択的にAZ−1に組み込んだとする「陰謀説」がどうしても視野に入ってくる。
あえて陰謀説を唱えるのならば、スズキによる陰謀ではなく、マスターバックやミッションのサプライヤの陰謀とすべきであろう。不良品ばかり選択してAZ−1用の部品に仕立てるといった手の込んだ(コストのかかる)ことをスズキがサプライヤに対して指示することは、スズキに対して何のメリットもないためだ。
反面、サプライヤの単独犯行だとすると、AZ−1とワークスの部品の造り分けは可能なわけだから不良品もしくは不良ロットを選択的に処分できるメリットがある。一度組んでしまえば外から見えないので異常があるか判断できないし、AZ−1はマツダで設計したものを、クラタ(現キーレックス)で製造したという複雑な経緯があるため、責任の所在の明確化だけでも面倒な話になってしまい足がつきにくい状況にある。製造台数が少ないため、市場からの声も上がりにくい。
真偽のほどはさておき、同じ部品を使っていても、AZ−1の方に異常な現象が多発していることだけは確かだ。