スパークプラグは、自動車史上初のオカルトチューンパーツ?

 普通の電極から白金、そしてイリジウムへと変化していったスパークプラグ。では一体何のために進化していったのだろうか。エンジンのパワーアップのためだろうか、それとも燃費改善だろうか?

 結論から言うと、冷間時始動性改善のために進化し続けている(耐久性改善は当然として)。パワーアップや燃費改善のためではない。しかも冷間時始動性とは、「ある冬の寒い日」といったようなレベルではなく、マイナス30℃といった極低温での始動性改善なので、普通に車を走らせている人には何の関係も無い話なのである。プラグのHPを見ると、パワーアップだの燃費が良くなるだのと書かれているが、これは2の次・3の次の話。しかしこの点を過大に主張しないとプラグが売れない。言い方を変えると、「スパークプラグとは、自動車史上初のオカルトチューンパーツ」とも言える。


 ちょっと、話をわき道にそらそう。ここでいうオカルトチューンの定義は以下の通りである。
1.特定の現象改善に対し、どう考えても効果の無さそうな原理で作動させるパーツである。
2.メーカー説明資料には、改善効果を示すデータがある。
3.ユーザーレベルで見ると、効果があった・無かったと議論が二分される。

 この定義に沿ってスパークプラグを改めて見ると・・・
1.火花が飛ぶ原理から考えると、プラグだけで劇的なパワーアップや燃費が改善できそうにない。
2.メーカーHPをみると、これらの改善効果は微々たるものである。また、プラグの異常状態の参考例をみると、エンジン不調に陥るように見えるダメプラグの例が掲載され、交換を促している。
3.ユーザーレベルで見ると、パワーアップ等に効果があった・無かったという話が出てくる。一方、今回のレポートでも、飛火ミスでエンジン不調に陥った履歴のあるプラグを別のエンジンに取り付けたら問題無いという事例がある。見た目で判断するとどう見てもエンジン不調に陥りそうなプラグが、何の問題も発生させなかったりする。

 上記3のように、エンジン不調等が再現しない場合があるため、諸説が混在してしまい、結果として史上初のオカルトチューンパーツと呼べる状況になるのではと考えられる。
 ではなぜ再現しないのだろうか。これは同じ種類のエンジンであったとしても、エンジン自体にばらつきがあること、例えば空燃比に差があるとか、プラグ以外の点火系に微妙な差があるとかで決まってしまうのではないか(推定)。そうしないとAZ−1同士でプラグを変えて、一方はエンジン不調、一方は問題無いといった状況が説明できない。



 話は本論に戻るが、プラグ本来の改善目的が極冷間時の始動性改善なので、温間時のエンジンに好不調は発生しないはず。にもかかわらず好不調が発生する/しないのは、やはりエンジン本体側の個体差に起因するのだろう。

 詳細は後日レポートするが、衝撃的なプラグをお見せしよう。接地電極をサンダーで故意に削り落としたプラグである。プラグメーカーのHPをみても、完全に壊れた状態のプラグと言える。が、こんなプラグでも火花は自体はちゃんと飛んでいるし、冬の寒い日でも何の問題も無くエンジンは動いてしまうのである。もちろん、高負荷時もパワーの低下は体感できない(測定すると微妙な差は出るかも)。ほんと、プラグって一体何のために改善検討されているのだろうか。寿命であると明確にいえる時期(状態)はいつなのだろうか。プラグギャップが1.1mmなのはなぜ??? わからなくなってしまった。


動画は写真をクリック



 わからなくなってしまったところで、おしまい(おいおい)。ただ、プラグ本体の性能が云々いう前に、エンジン等別の部品の個体差が大きな影響を及ぼしているがために、プラグに対して諸説が生まれてくるのは間違いないようだ。今回のレポートではっきりしたのは、
1.耐摩耗性という観点でみると、デンソーのU溝接地電極のは全然だめ。この点は、デンソー自身が「イリジウムタフ」にて実証している。
2.飛火ミスはデンソーのU溝接地電極で起こりやすく、特に高回転側でエンジン不調に陥る一要因となる。しかし、エンジン等の個体差により問題が顕在化しない場合も多々ある。


 さて次回は、点火系のもう1つの重要部品、イグニッションコイルを見ていく。コイルによる発生電圧の差はあるのだろうか。AZ−1のイグニッションコイルは、何万ボルト発生しているのだろうか。



【参考1】
 昔のキャブ車時代には、プラグがかぶることがあった。昔はかぶっても確実に火花をとばせるようにすることがプラグ改良の目的の1つであった。現在市販されているプラグでも、特に多電極プラグにて、プラグかぶりに対して効果があるようなことが書かれている。しかし今は、ECUの書き換えなどを行って極端にリッチにしない限りは、プラグがかぶることは考えにくい状況にある。
 またかぶりの改善効果を歌ったプラグの火花の飛び方を見ると、どうみてもかぶりによる点火ミスを回避する効果が無さそうであるし、実際かぶるときはかぶる。かぶったらプラグを焼いてやらない限り、火花は飛ばない。


【参考2】
 「プラグを交換したらエンジンのかかりが良くなりました」的な動画があるが、1点注意が必要である。その日最初のエンジン始動は交換前のプラグで、交換後は2回目のエンジン始動となっている点だ。そりゃ2回目の方がかかりやすい。正確に比較するならば、1回目のテストの後に24時間は放置して、エンジンをさます。それから新しいプラグに交換してテストする。これで比較すれば、違った結果になる場合があるはずだ。