20周年記念酒のラベルデザインの裏話

 車のミーティングをすれば、記念ワインなどが売られることがある。車と酒の関係は調べてもよくわからないのだが、恐らく次のような感じなのではないか。
1.昔は車の所有者は大金持ちだった。
2.中には「何とかシャトー」という城をもっている人がいた。
3.車のミーティングを行う際、「何とかシャトー」の中で作ったワインが振る舞われた。
 ここで1つの説が生まれる。日本には、1と2と3の一部が抜け落ちて「ワインを振る舞う」という行為だけが入ってきた、という説である。


 仮にこの説が正しいとした場合、自動車趣味の本道という面から考えると、日本で行われていることは実に表面的な行為である。
 記念酒を売るにしても「AZ−1でこんな表面的な行為が許されるはずがない」との思いで作られたのが20周年記念酒である。いかにこの酒が本質的(?)かは、以下の理由をみればわかる。

1.酒は、AZ−1オーナーの杜氏が仕込んだ日本酒である。
2.ラベルは、AZ−1のデザイナーが描いたものである。
3.瓶は、純正色で設定された赤と青の2種類を用意した。
 これ以上ないという究極の条件を組み合わせて完成した記念酒なのである。




 酒の味だが、感じ方には個人差があるためなんとも言えないが、とにかく飲みやすい日本酒だった。飲みやすいので、ぐいぐい飲めてしまい、急に酔いが回ってくるタイプ、という表現もできるかもしれない。

 記念酒のラベルは、デザイナーの大黒さんに描いていただいた。4台のAZ−1が描かれているが、なぜこの絵になったのか、裏話を話そう。



 時はAZ−1の20周年ミーティングからさかのぼること2年前の2009年、ロードスターの20周年ミーティングで、やはり記念ワインが販売された。販売された理由の1つには「地域貢献」がある。このワインは「三次ワイナリー」というところの酒で、三次ワイナリーは三次のテストコースの隣にあるのだ。
 20周年ミーティング会場の出店に、何の説明も思い入れも無くポンと売りに出されたワインを目にして、「こんな軽いノリの、何のこだわりも感じられないものを作ることが、趣味の車を持つ者の成すべき事なのか??」と疑問に思ったのが、AZ−1の20周年記念酒を企画した発端である。
 AZ−1オーナーで杜氏の「飲んだくれおやじ」さんに、酒が手配できるかどうか早速聞いてみたところ、可能との返事があった。「職人として、このような軽いノリで酒を作るわけにはいかない」という心強い返答だった。

 この返答を受け、具体的なアイディアを出していった。一番最初のアイディアは以下のものだ。
1.ノーマル、MSV、M2のラベルを作る。
2.同じボトルに入った同じ酒で、ラベルを変える(3種類できる)。
3.ノーマルが2000円、MSVが2500円、M2は3000円で売る。
  中身が同じでもラベルが異なるだけで値段が変わるとは、実にAZ−1らしい(笑)。
4.ノーマル、MSV、M2の3本セットは、6000円で売る(結局1本2000円)
 が、さすがにそれはないだろうと言うことで1本2000円とした上で、1枚のラベルにノーマル、MSV、M2の絵を描くことになった。


 この変更は大黒さんにも伝えていたのだが、大黒さんの中ではノーマル、MSV、M2のラベルを別々に作るという話が生きていて、最終的に4種類の図案ができあがってきた。それが下の絵である。おまけに、ボツ案となったA20のロゴまで入れられていた(ボツ案には、赤字でBORN1992と書かれている)。



 が、せっかく描いていただいたのだから1つにまとめ、A20のロゴも正規版に改めたのが記念酒のラベルとなったのだ。これがラベルの裏話である。



 ちなみに、上の4枚の絵の内、右下の絵にはAZ−1以外の車が描かれている。これは何かというと「FL500」のレーシングカーである。FL500とは、スモールフォーミュラと言うべき昔のカテゴリである。


 話は変わってボトルだが、この手配にも飲んだくれ親父さんに尽力いただいた。特に赤いボトルは手配が困難だったのだが、クリアのボトルに色を付けて対応。キャップをはずすとその部分だけ赤色になっていないのが特徴である。対して、青のボトルは既製品で全て青色だ。そのためボトルの価格は約40円ほど赤の方が高くついている。







 今回はこれでおしまい。次回も特別展示車両を中心にお伝えする。