実はオーバーヒートしていた

 錆とは関係ないが(ひょっとすると出火と関係あるかもしれないが)、よくよく見るとこのエンジンはオーバーヒートを起こしていた。下の写真はガスケットが付いた状態のシリンダーヘッドだが、矢印部分のガスケットが溶けている事が分かる。溶けているのは吸気側だ。




 ガスケットのみ撮影したもの。




 ガスケットをはずしたシリンダーヘッド。矢印部分が欠けていることがわかるだろうか。溶けているというレベルではない。



 ガスケット回りだけではない。燃焼室内も溶けていた。アルミが溶け落ちてバルブシートがむき出しになっている。



 オイルパンやクランクシャフトのジャーナル部分に変な液体が溜まっていたが、これは消化剤とオイルが混じり合ったものではなく、オーバーヒートによるヘッドの歪みやガスケットの熔損により漏れだしたクーラントとオイルが混ざったものだと考えられる。またシリンダー内に緑色をした粒があったが、これはクーラントが混ざったものだと考えられる。オーバーヒートすることによりシリンダーヘッドがどれだけ歪むかは、次回紹介する。

 オーバーヒートしたからその熱で火災が発生したのか、はたまた火災が発生したからオーバーヒートしたのか定かではないが、1つだけ確かなことがある。それはクーラントが突沸したということだ。その証拠がサーモスタット。




 サーモスタットをみると、センターの軸が折れ曲がっていることが分かる。クーラントがものすごい勢いでシリンダーブロックから押し出されたために曲がったと考えられる。



 以上、粉末式消火器をかけたエンジンはひどい状態になり、本当に使い物にならなくなることが検証できた。この結果から得られる教訓は、粉末式消火器は使わず二酸化炭素などで窒息させる消火器の方が断然よいということだ。


 とはいえ「はい、エンジンがダメになりました」で終わっていては、希少絶版車乗りとして失格である。次回は、仮にエンジンがオーバーヒートしてなかった場合、このエンジンはどこまで復旧出来るのか挑戦していきたい。つまり、発生した錆などがどこまで落とすことができ、正常品に近づけることが出来るのかに挑戦する。