ミッションが入らない原因はシンクロナイザーハブにあった

 シンクロナイザーハブとシンクロナイザーリングが重なってしまう現象は、いったいどちらに問題があるためだろうか。当HPではシンクロナイザーハブに問題があったと判断する。理由は以下の通りである。

 1.ミッション各部の寸法はマニュアルにある限度内以下だったため。
 2.次のモデルからシンクロナイザーハブのみ変更があったため。


 ミッションが入りにくくなる原因は、当初はカウンターシャフトに組み付けられていたシンクロナイザーリング等に摩耗が生じたことが原因と考えていた。が、様々なミッションを分解していく過程で、ミッションが入らない原因はシンクロナイザーハブの設計ミスもしくは製造ミスであり、それが元となってシンクロナイザーリング等に摩耗が発生したということがわかった。
 K6Aのシンクロ類に交換するとAZ−1のミッションの入りが良くなったという話を聞くが、これは新品の部品を組み込んだから異常がおさまったのではなく、対策品が組み付けられたことが主因である。


 シンクロナイザーハブの部品番号の変遷を見ていこう。まずはCARA(AZ−1パーツカタログよりCARAの方が説明しやすいのでこれを使う)。




 シンクロナイザーハブは29番の部品だ。




 部品番号は、24400-63D20となっている。




 これが次世代モデルであるHBのアルトになると・・・







 やはり29番の部品がシンクロナイザーハブで・・・




 部品番号は、24400-63870に変わっている。シンクロナイザーリングには変更はない。さらによく調べてみると、CR系のワークス(AZ−1と同世代のワークス)の最終型の途中からこの部品に変更され、初代ワゴンRは初めからこの部品が使われていた。




 最後はKeiだ。このミッションが事実上の最終型となっている。どういうことかというと、スズキの国内向け仕様車のほとんどはATになってしまったのだ。もちろんまだマニュアルミッションもラインナップされているが、NAのエンジンにしかラインナップがなかったりする。ターボエンジンのマニュアルミッションの設定はもうKeiにしか残ってない。「いやそんなことはない」という情報をお持ちの方は是非ご一報を。



やはり29番の部品がシンクロナイザーハブで・・・




 部品番号は、HBのワークスとかわらないのだが・・・




 新たに48番の部品が設定された。要は、シンクロナイザーハブ周りの部品がこの10年間で対策されてきたのだ。




 実際に取り付けて検証したのではないのだが、Keiと同様にシンクロナイザーハブを24400-63870に変え、さらに48番のスプリング(24436-76G00)を加えてやれば、現状で可能な最大限の改善ができるはずだ。別のレポートで詳細を述べるが、Keiのミッションを分解してハブの入りを試したところ、実にスムーズに入るのである。


 ところで最後に疑問が。ワークスではミッションが入りにくいというような話をあまり聞かないし、カウンターシャフトについているギア類は、AZ−1と同様の摩耗の仕方をしていた。なぜAZ−1だけ極端に入りにくいのだろうか。その謎を解くキーがインプットシャフト側にある。ローギアの部品番号はAZ−1とワークスで同じなのだが、見た目がまるで違うのだ。

ワークス AZ−1


 ここからは憶測になるが、シンクロナイザーハブも部品番号は同じなのだが実は微妙に寸法が違っていて、それがミッションの入りにくさにつながったのかもしれない。


 もう1点考えられることがある。それはギヤシフト用のシャフトの長さの違いの影響だ。AZ−1の方が短いためシャフトを支えている場所の長さが短くなり、シャフトにガタがでやすい構造になっている。この点については言葉だけでは説明しにくいため、別途レポートしよう。