シリンダーブロック、その2

 オイルパン。




 中を見るときれいなものだった。




 ところがオイルパンをはぐると、見慣れないものがあった。シリンダーブロックに刻印があったのだ。何を意味するものかわからない。少なくともAZ−1工場出荷状態のシリンダーブロックには刻印はないはずた。AZ−1のエンジンを今まで分解してきて見たことがないので。




 2番と3番のベアリングキャップを見て欲しい。矢印の部分に穴が開いている。




 穴が開いていないAZ−1工場出荷状態のものを並べてみた。




 2番と3番に穴があるシリンダーブロックは、ジムニーのシリンダーブロックである。この穴は、ストレーナーを固定するためのネジ穴なのだ。ジムニーのストレーナーはAZ−1やアルトとは異なり、1番シリンダー直下ではなく3番側に伸びるようについている。オイルパンをそういう形状にしないと、ステアリングラックと干渉してしまうからだ。カプのシリンダーブロックは見たことがないのだが、ストレーナーならある。カプのストレーナーは2番の下あたりにくるように伸びており、ストレーナーから出ているステーは1本だけ。よって、ベアリングキャップの穴は1つだけと考えられる。


 またコンロッドには、会いマークがしてあった。完全に分解されていたことが分かる。



 今までの状況をまとめると以下のようになる。
1.シリンダーブロックはAZ−1のではなく、ジムニーのがついていた(唖然)。
2.ヘッドにもオーバーホール履歴がある。特に、バルブスプリングリテーナーは、別のエンジンのものがついてた。
3.ブリーザーケースの形状から、カムカバーはAZ−1専用だった。
4.「EPI」の表示の向きから、インマニはAZ−1専用だった。


 以上の事実をもとに以下のように断定もしくは推定する。
1.カム及びカムカバーは、21万キロを走行しているものと断定する。
2.シリンダーブロックがジムニーのものになった理由は、過走行によりメタルが潰れてクランクシャフトがだめになりエンジンブローになったためと考えられる。修理の際、手近にあったジムニーのシリンダーブロック+クランクシャフトが用いられたと考えられる。
3.その際、ピストンはもともと付いていたAZ−1のものを流用したと考えるのが自然である。
4.断定できるだけの根拠はないが、ロッカーアームは摩耗度合いから21万キロ走行したものと考えられる。ロッカーアームのみ別のエンジンから取ってきた部品とは考えにくいため、シリンダーヘッド及びバルブもAZ−1にもともとついていたものが再利用されており、21万キロ走行したものと考えるのが自然である。
5.リテーナーが変わっていたのは、バルブ摺り合わせを終了して組み直した際、間違ったものを付けたためだと考えられる。


 次回は、各部の計測値を紹介する。