最後に

 このヨタ話も最後になるが、みなさんは「エントロピーの法則」というのを聞いたことがあるだろうか。正確には熱力学の法則で私も小難しいことはわかっていないのだが、ここでは物事は自然と「乱雑な(無秩序な)」方向に進むという法則であると解釈していただくレベルで問題ない。例えばコップに水を入れインクを静かに垂らすと、始めのうちはインクが同じ場所にとどまっているが、時間が経過するとコップ全体に拡散していき均一に薄まっていくというやつだ。エントロピーとは無秩序の度合いのことで、エントロピーが増大するとは、無秩序な状態が進むということである。

 ネットもエントロピーの法則に抗(あらが)えない。証明するかのように様々な分野でブログだのSNSだのが出現し、これからももっと増えていくだろう。ここで気を付けたいのが、今までだれも注目しなかった分野での活動が活発化するというメリットがある一方、「車」のような既存の分野における無秩序の増大は総じて怠惰な方向へ進むという点である。特に人間の絡むものはその傾向が強い。楽な方がいいに決まっているからだ。
 この11年で特に旧車や趣味の車を取り巻く状況はますます悪化したように思う。系統立てて情報を整理した源が存在する上で内輪の話をするのなら私もやっているのだが、ちゃんとした源がが出現する前にブログやSNSが出来ては消え出来ては消えの繰り返し、旧来のクラブも混在してますます混迷する状況になっているように見えるからだ。「情報が分散化し、何がどこにあるのかわからない」といった旧車の犯した過ちの繰り返しをインターネットの出現で防ぐことができると思ったが、ネットはエントロピーの法則に抗うことができないどころか、ますますエントロピーを増大させてしまった。
 なぜこんなことになってしまったのか。思うに車を通じて系統立てた情報を整理しようという意識をもって実際に行動を起こさなかったこと、そして何が理想かを何が現状かを明らかにした上で、現状を理想に近づけるための行動を起こさなかったこと、そもそもそんな意識を持った人間が運営しなかったことが考えられる(このあたりのことは、前々から述べているので省略)。前項で触れたマンガやアニメの話をこんなところで熱く語るだけでは、コミュニケーションを図るための取っ掛かりとなったり内輪で盛り上がることはできても、マンガやアニメの発展に対し何ら寄与しないことこそが良い例だろう。

 出来ては消えるというネットの中で、当HPのような本格的な取り組みを行う所の割合は相対的に少なくなってしまうのだろう。しかし最後まで残るところ、一番楽しめるところは本質を追究するサイトだと確信する。なぜなら「発展」といった明確な目的が存在するからである。系統立てて情報を整理しようという意識をもって、行動を起こし続けようではないか。自動車趣味の本道を追求する者は我らなり(AZ−1に限らず)。行動を起こすとは何も難しいことはない。何らかのネタの提供はもちろん、簡単な質問でも他の人に役に立つ。これらを多くの人に開示したり整理することが、旧車・稀少車・趣味の車の発展へとつながるのだ。思想信条・価値観の違いを乗り越えて、お互いが発展へと貢献しあうことほど楽しめるものはない。