エンジン不調の原因

 段々エンジンの調子の悪くなるTWR零号機。とにかくパワーが出ない。過給しない。エンジンブローしてはいけないので、ペースを落とす。このとき、ついに26位まで順位が落ちてしまった。




 エンジンの調子は確かに悪い。しかし様子が変なのだ。異音などしない。エキマニとタービンを結ぶボルトが緩んだのだろうか。一体どうなっているのか、一度ピットに入ってチェックすることにした。その結果エンジン本体には異常なし、タービンのみがおかしくなったという結論に達した。また今の調子でペースを落としたままだとガソリンが余る計算になった。そこでタービン付きNA車として走ることを決断。ギヤを落としてとにかく高回転で引っ張り回すことにした。この結果、一時は4分台まで落ちていたペースが3分20秒〜40秒まで回復した。

 日本へ帰ってきて原因が分かった。燃料フィルターが詰まっていたのである。フィルターを取り外したところ、黄土色の液体がフィルターの中から出てきた。ガソリンが乾燥すると非常に細かい粉体となった!




 そこで顕微鏡で拡大してみた。色や形状からして砂に間違いない。その大きさ、数十μm。

  左をさらに拡大したもの

 フィルターを分解してみた。中から出てきたフィルターを振ると粉体が落ちてきた。フィルターそのものを顕微鏡で見てみたが、確かにフィルターの目の中に同じものが詰まっている。




 日本のガソリンにこんなものが入っているとは思えないのでマレーシアのガソリンの影響だろう。だとしたら、他の車も同じ症状が出ていてもおかしくないはずなのだが、そんな様子の車は見られなかった。AZ−1の燃料フィルターの目が他の車より細かいのか、それともこのドラム缶だけたまたま砂が入っていたのか・・・途中まで調子がよかっただけに悔やまれる。


 実は夜が明けてからは淡々としたレース運びとなった。普通にレポートしたら全然おもしろくないので、余興としてガンダムで語ってみよう。



父ちゃん:こいつをAZ−1のコンピューターに取り付けろ。787Bのコンピューターの回路を参考にして開発した。
     すごいぞ、AZ−1の戦闘力は数倍に跳ね上がる。




飛雄馬:こんな古い物を・・・父さん酸素欠乏症にかかって・・・

父ちゃん:ええい、ヨタ8はいい、ヨタ8は。AZ−1を写せ!。




シャア:よく見ておくのだな。24時間耐久というものは栄光のル・マンのように格好のよいものではない。




ララァ:白い点線の入った変なのが勝つわ。

シャア:AZ−1は写ってないぞ。

ララァ:わかるわ。そのために私のような女を大佐は貧民窟の売春宿から拾ってくださったんでしょう。

シャア:ララァは賢いなあ。つーか、30過ぎてもAZ−1・AZ−1って、ど〜かと思うね、僕かぁ。

ララァ:いけません、大佐!



 またピットには、とんだお客人もやってきた。夜間ホテルに宿泊していたチーム員を乗せてセパンまでやって来たタクシードライバーである。この運ちゃん、セパンへは観客として何度か来たことがあるとのことなのだが、ピットに入るのは初めて。セパンに行くと言っても「どっちのサーキットの方だ?」と言ったとか言わなかったとか。どういうことかというと、セパンには我々の走っている本コースとカートコースがあるのだそうだ。そりゃ、カートコースだと思うだろう。
 ピットウォール越しからサーキットを走る車を見た時の、あっけに取られた顔が忘れられない。なんといっても見たことのない妙な形をした車が爆音を上げて走っている。にもかかわらず観客はだれもいない。「これは練習走行だから観客がいないのか」と聞かれたくらいだ。それに対し、「マイナーなレースだから観客は誰もいない」と答えた。観客から金をとらず(=資金回収の目処が立たない)、わざわざ日本からセパンまで走りに来るといった行動は「金満日本人の道楽」といった範疇さえをも超越しているので理解できず、あっけに取られていたのであろう。実際、私がセパンの話を日本人にしても全く理解してもらえないのだ。

 彼は車に大変興味があるらしく、またピットにも入れてあげたような仲なので、耐久終了の翌日に彼の仲間の運ちゃんのタクシー3台に分乗して、げげぼツアーに行くことになった。このタクシー自体なかなかすごい物があるので、後に紹介する「マレーシアげげぼツアー」の中で取り上げる。お楽しみに。