柿元総監督・星野監督トークショー






 走りの世界を極めてきた人達だけあって、なかなか興味深い内容だった。今までレーサーの方々の話をいろいろ聞いてきたが、私的には2番目に面白かった。
 ちなみに一番すごかったのが、寺田陽次郎(字が違うかも)選手のルマン優勝の際の話。何がすごいかって、帰国してからあまり日が経ってないのに原稿もないままで朗々と話し始め、最初から最後まで話の筋が一本通っていた上、時間ぴったりに話が終わった。あまりの完璧ぶりに、話の構成解析に気を取られ、肝心の内容をよく覚えていない(爆)。職業選択を誤っているのではないかと思うほど完璧なトークだった。このトークが今までのなかでずば抜けて優れている。
 逆に一番訳が分からなかったのが、当HPにおいて裁判で有名な人のトークショー。三郷市の市民会館かどこかであったトークで、当HPで特別企画にまとめようと考えていたのだが、あまりのとりとめのない話に断念したことがある。今まで様々なイベント等に出向き、話を強引にこじつけたりして(笑)、結果400近い特別企画をまとめてきたが、論旨の一貫性のなさゆえに、唯一どうしても特別企画としてまとめられなかった。
 次は中島悟選手、番外編としてはハーレーに乗って全国を回っている不良牧師「アーサー・ホーランド氏」のトークショー・・・と続いていくかな。


 前置きが長くなったが本論に入ろう。輝かしい実績のある人の話だけに、「仰せの通りで」、「御意に」、「御名御璽(なんのこっちゃ)」と、ただうなずくしかない。ポイントをかいつまんで言うと、とにかく速く走れるようになるには練習するしかない、練習するとは自分の限界を超えられるよう常に努力すること、自分の限界を超えるには速く走るための作戦を思い描きトライするしかない、限界を超えるということは教科書なんかないということ、教科書を作れるのがプロ、トライすると言うことは失敗することもあるということで今までマシンを何十億円分か壊しつづけた、しかしこれくらいやらないと物事は極められない、ということだった。





 一方、耳を疑うような話もあった。トークショーの最後に質問コーナーがあったのだが、最初の質問は「チューンナップはどこから始めればよいでしょうか」というものだった。あまりに漠然とした質問にいったいどう答えればいいのかと、聴衆の私の方が心配になったのだが・・・・ここで信じられない回答があったのだ。

 「まずはエアロをつけ、羽根をつけて、一番最後にいじるのはエンジンとコンピューターかな」

 足周りがないじゃん、そもそもこれってチューンナップではなくドレスアップと言わないか??、とさすがに思ったが、こういう回答をしたのには複数の意味や理由が隠されていた。まず、ドレスアップすることは、NISMOやIMPULの商品が売れることを意味するので、チーム運営が楽になる。この回答ではレースチームの監督としてではなく、一営業担当としての回答だったのだ。一方監督としての回答は「どうせ極められないのだから、エンジンなんかいじらずにカッコだけで満足していろ、それが一番楽しいし幸せだ」というもの。最後の理由は、エンジンからチューンしろなんていうと、車の不正改造を行っていると言われかねず、下手をすると日産の看板にキズをつけることになるから避けたいという思いもあっただろう。いろいろな補足も取り混ぜて回答している中で、前述の3つの理由をにじませていた。ただ、羊をかぶった狼の方が好きだが、それには相当の覚悟が必要だ、とも述べていた。

 「覚悟、挑戦、至高」。本トークの内容は、この3つの言葉にまとめられよう。我々も肝に銘じたい。これに私がもう1つ付け加えるとしたら「還元」かな。「覚悟、挑戦、至高」で得た物をみんなに還元すること。レースでは自分のチームが勝てばよく、それが競争を生んで全体のレベルアップを図ることにつながるため還元なんて後継者育成以外大した必要性はない。しかし趣味の世界では還元なくして全体のレベルアップはない。競争原理がはたらく仕掛けになっていないためだ。