環境対応車はどれが本命??

 そもそもなぜ環境への対応に必死になるのか。それは、環境問題こそが史上最強の非関税障壁だからである。これを楯にすれば、今の世の中誰も文句は言わない。環境問題とはちょっと異なるが、BSEがアメリカで発生した際、アメリカからの牛肉の輸入が禁止されたのがいい例だ。牛肉の輸入自由化をもとめてアメリカが強烈な圧力をかけていたときには考えられなかったような強行策を日本がとったにも関わらず、輸入停止が2年も続けることができたのだ。驚異である。牛丼食いたいと言っても届かないのである。環境問題もこれと同じ。誰も文句が言えないのだ。

 ではアメリカやヨーロッパの車の輸入を阻止するために環境問題を切り札にするのかといえば、そうではない。労働コストの安い国が作ろうとする車に対する切り札となるのだ。先ほど紹介したハイブリッドやディーゼルは、労働コストの安い国=技術のない国・技術的インフラの整っていない国には作れない。通常の市場原理で考えると、労働コストの安い国は車を安く作ることが出来るため、先進国の作る高コストの車は市場から淘汰される。しかし、これではまずいので「環境問題(環境に関する規制)に対応してないから輸入は許可できません」といって労働コストの安い国の作った製品を締め出し、先進各国の自動車会社が築いてきた市場を先進各国の自動車会社同志で保護する。環境にいいものを使えという規制だから、規制緩和が叫ばれる現在においても、誰も文句は言わない。
 これがいかにおいしいか、逆説的に説明できる例がある。電機業界である。ここには非常に厳しい環境問題(環境に関する規制)が存在しないため苦しい思いをしている。もちろんハンダから鉛を抜けだの、六価クロムやカドミウムを使うななどという規制はあるが、原料から抜いてしまえばいいだけの話で、抜いたものを使うこと自体に複雑な制御やノウハウが必要というほどのことでもない。自動車でいう排ガスの認証試験のような厳格な規制・規格でもない。鉛を抜いたハンダを労働コストの安い国の会社が使ってしまえばそれで終わり。だから自動車とは異なり、強力な非関税障壁がないために開発した新技術がすぐに真似され、コスト競争で苦しい思いをしている。コストで苦しめられる・・・これは昔、日本の自動車会社が外国の自動車メーカーに対してやったこと。だからこそ、避けたい事態であることを知っている。


 とまあ前置きが長くなったが、環境対応車はどれが本命か。ところがそれは誰にも分からないのである(爆死)。
 よ〜し、こっからもっと分からなくしてやるぞ。そもそも近年出展されている環境対応車は、とどのつまり二酸化炭素をいかに排出しない車であるかということに尽きる。そのためハイブリッドだの水素だの燃料電池だのといっているわけだ。が、もし二酸化炭素を出していても、それが二酸化炭素を出したとカウントされないような車が出来れば・・・・・そんな車が実はあるのだ。アルコールを燃料に使う車である。今回、こんな車は出品されていない。なぜかというとアルコールを燃料とする車は、過去の技術だからだ。

 二酸化炭素を出していても、二酸化炭素を出していないという理屈。それを説明するため、プラスチックのリサイクルに目を向けてみよう。自動車も含めプラスチックリサイクルの世界では現在「カーボンニュートラル」という考え方が主流になっている。植物からプラスチックを作り、それを燃やして二酸化炭素を発生させたとしても、また植物が二酸化炭素を吸収してくれるので、二酸化炭素が出たとカウントされないという考え方である。



トヨタのカーボンニュートラルに関する説明パネル


 アルコールは植物から作ることが出来る。カーボンニュートラルの考え方が成立するならば、アルコールで動く車は確かに二酸化炭素を排出するが、二酸化炭素が出たとカウントされないことになる。そうなると今まで必死こいてやってきたハイブリッドやら燃料電池やらは、コストが高いだけの意味のない技術になってしまうのだ。ハラホロヒレハレ・・・

 アルコールで動く車は、既存の技術が適応可能でコストも安い。じゃあこれがベストじゃないかと思われるかもしれないが、労働コストの安い国でも作れる車のため、最強の非関税障壁がくずれてしまうので自動車メーカーとしては絶対採用したくない。現状では冷間始動性や排ガス、アルコールのコストにも問題がある。アルコールは石油からも作れるため、本当にカーボンニュートラルになるかわからないし、アルコールで車が動くと石油が売れなくなるので、石油連盟からの圧力もかかる。こうなるといろいろ複雑な事情がからまって、どれが本命技術やらますますわからなくなるのであった。「環境対応車はどれが本命かわからない」と自動車会社が口をそろえるのは、こういう事情があるのだ(というのが環境対応車に対する当HPのまことしやかな説である)。



 というわけでモーターショーのレポートをしてきたが、残念ながら趣味の車に適応できるネタはちょっとしか見あたらなかった。得るもんなかったなあ。