結局どうすればいいの

助手: 教授、まとめると結局どうなるんですか。

教授: 自動車趣味をやるのに必要なのは以下のものじゃな。まずは人の面じゃ。

 1.自分も含め周りの人全てを不幸にするかもしれんという覚悟
 2.車が壊れるなどの試練があっても克服できるだけの不屈の精神力
 3.上記1,2を合理的に説明できるだけの説得力と冷静な判断力
 4.目標の実現、課題の解決ができるだけの実行力

組織の面ではこれらじゃ。
 1.個々人の嗜好の違いを乗り越え、「車をどうしていくか」という切り口の設定
 2.優秀な人に集約するシステム、それが無理なら優秀な人しか入れなくなるような敷居の高さの確立
 3.上記1,2により実現できる冷静な議論と判断
 4.組織の絆を、お互いのメリットにおくようにする。

助手: こんな完璧な人間、いるわけないじゃないですか。

教授: 確かに現状ではおらんかもしれん。しかし、努力すればできる範囲じゃ。それができねば成長せん。アウシュビッツで生き残った人たちに共通するものは何か知っておるかね。

助手: 何ですか?

教授: 絶望の淵の中で、次に何をすべきか考えていた人々なんじゃそうだ。そのためには、上述のまとめに書いてあるような基本的な能力を鍛える必要があるんじゃ。そうしなければ、車は朽ち果てる。

助手: 無理ですよ、無理。

教授: いや、机上検討では不可能なことではない。趣味の車って台数が少ないじゃろ。少ないということは、それだけ優秀な人間に絞り込める可能性があるということじゃ。ただ現状では、逆に網に漏れた連中がたむろしているのが自動車趣味となっておる。

助手: く〜、網に漏れたとはバカにして〜!

教授: 怒ると言うことは、図星ということじゃな。

助手: しかし、まとめにあるような人間ばかりそろったら、同じ価値観を持った人間ばかりになるような気がします。すると、いざというとき絶滅するんじゃないですか? 例えば沖縄あたりの蝶は、さなぎから羽化する時期が同一ではなく、2ヶ月くらいずれている種があると聞いたことがあります。同質でないが故に、台風が来たとき既に羽化したものは全滅しても、さなぎは助かるから種としては絶滅しなくて済むのだとか・・・

教授: ここで言っているのは価値観が同じ人間をそろえるということではないよ。最低限保有すべき能力とやり方について言及しておるのじゃ。基礎的な力がないと、それこそ絶滅への道を歩むだけじゃぞ。これは他の車で既に何例も結果が出ておる。多様化はその後でいい。羽化する力と羽化のやり方を知らないさなぎが、これ以上成長できると思うかね。

助手: じゃあ排他と呼ぶべきでしょうか。

教授: 排他じゃないよ、適切な能力を持つ人を振り分けするだけじゃ。君は排他と能力別振り分けを混同しておる。君の混同は過保護すぎる平等主義ともいえるもので、こいつはろくなもんじゃないよ。過疎地方への税金ばらまき行政がいい例じゃ。おかげで国全体が借金まみれになって、全体が全滅しなねない。自動車趣味も同じじゃ。ただ、国家行政と自動車趣味は状況が異なるんで、今出した例は極端じゃが。ばらまき行政をやめたとたん地方財政が破綻して失業者が増え、犯罪も増えることになりかねん。それこそろくなもんじゃないかもしれん。ただ自動車趣味の場合は、趣味の車以外の車に乗れば済むことじゃ。要は失業者は出ず、治安が悪化することはないということじゃな。

助手: 車の保守を考える人が正しく、そうじゃない人は間違っているということですか?

教授: 違う。何度もいうように、これは自動車趣味をするための基本要件じゃ。これがないと、ドレスアップもモータースポーツも巧くいかんし、長続きもせん。今よりも速くなるということは、まず現状で遅い原因を分析し、課題を抽出して対策を打つから速くなるんじゃ。気合いで速くなるんじゃない。あとは本人のセンスかのう。





助手: そんなにがつがつせず、もっとマイペースで楽しみたいですねえ。

教授: マイペースか。その言葉を自動車趣味にあてはめると、どうもしっくりせんところがあるのう。

助手: というと??

教授: 多くの場合、自動車趣味での「マイペース」という言葉は、世間一般でいうところの「流浪」という意味じゃないかと思うんじゃな。

助手: そうですかねえ。早くやる人もいれば、ゆっくりやる人もいるでいいじゃないですか。

教授: 通常はそうなんじゃな。例えば10kmマラソンを1時間で走るひともいれば、2時間かけて走る人もおるかもしれん。しかし、そこには10kmという目標と、走るコースがあるわけじゃ。そこを何時間かけて走るかはランナー能力ににあったペースで決まり、それがマイペースだと思うんじゃ。ところが現状の自動車趣味をみると、目標もなければコースもない。自分で目標設定もコース設定もしようとせず、また設定する能力もない。それでフラフラ・ダラダラやる。これはマイペースとはいわんじゃろ。

助手: 目標もコースもマイペースで決めればいいじゃないですか。

教授: そのような気構えで考えているようじゃあ、永久に決まらんな。そうやって流浪した結果時間を浪費し、その間に車が朽ち果てていくわけじゃ。

助手: こういうやり方は意味がないと。

教授: そうじゃな。このドタバタ劇で得られた結果はマンガのネタくらいにしか使えんな。





助手: ひょっとして、教授って嫌われていません。

教授: そりゃ好かれる方がいいんじゃが、一般社会におけるテストのような能力淘汰システムのない世界でただ単に好かれると、人災も集まってきて全体のレベルがさがるぞ。それは避けたい。

助手: またまた、強がって。

教授: 強がるも何も、自動車趣味発展のための最善の手段をとっているだけじゃよ。だいたいこれしきのことで嫌悪感を示すようなやつは、実社会でもモノにならんよ。学校で落ちこぼれ、会社で落ちこぼれ、趣味の世界でも落ちこぼれたんじゃあ人生いいとこなしじゃ。ま、自分が人災ではないというプライドがあるなら、それにふさわしい行動をとることじゃ。

助手: それはそうと、改めてまとめてみると小難しいこと、私の意見に対する否定ばかりですねえ。これって逆効果じゃないですか。よくあるでしょう、厳格な父の職業は警官とか学校の先生。にもかかわらず、育った子供はとんでもない不良ってのが。

教授: 厳格ゆえに、誉められることなくまた親の愛がなくて育った人間じゃな。

助手: そうそう、それと同じ。教授の主張には愛がないですよ、愛が。

教授: 一つ言っておこう。車の免許を取れるのは法律では18才以上だし、実際には20才を過ぎて買う人が多い。赤ちゃんじゃないんじゃよ。こんな歳になってこれしきのことでぐれるようじゃあ、そいつは終わっとるぞ。前にも言ったが人災を相手にしてもしょうがない。芽の出ないやつらをずるずると引っぱり回すよりも、早期にあきらめさせ本人の持つ別の能力が発揮できる進路に目を向けさ成功に導くことが本当の愛なのかもしれんぞ。まあ、このあたりは人それぞれなんで、一概にはいえんがの。

助手: じゃあ言い方を変えましょう、教授の人間性に問題があると思います。

教授: 何を言う、私のような神様仏様のような人間はおらんぞ。人の成長を常に考え、若い人の意見を聞き、チャンスを与え、誉めて人を育てる。途中でコケた人にはバックアップの救済策も考えておる。

助手: よく言いますねえ、聞いてる私が恥ずかしくなります。どこが誉めて育ててるんですか。けなしてばかりじゃないですか。

教授: あたりまえじゃ。よいところがあるからこそ誉められるんじゃ。誉めようのないやつは、どうやっても誉められんぞ。

助手: 結局けなしてるんじゃないですか。

教授: 不平不満しか言わない者に対し、どうやって誉めろというんじゃ。何かを行い出した結果があってこそ誉めることができるんじゃろ。それが例え悪い結果でも、その中には次へステップアップするための課題が隠れておるもんじゃ。そこを見つけて誉めるだけじゃよ。

助手: よくわかりました。兎にも角にも教授が一番エライ、教授の話のわからんやつはバカだということなんですね。

教授: だ・か・ら、何も行動をおこさずそんな発想しかできないから、君はいつまでたっても助手のままなんじゃ。





助手: しっかし、教授の言うことが実現したとしたら、がんじがらめのつまらない世界になりそうですね。

教授: どこが??

助手: やっぱりOFF会でBBQ食ったり酒かっくらったりした方が面白いですよ。自動車雑誌でもそんな記事ばかりだし。みんな楽しそうじゃないですか。

教授: 堕落の極みじゃ。自動車雑誌は基本的に最もレベルの低い人にターゲットをあてて誌面構成しとる。夢を与え、裾野を広げないと本が売れんからな。だからそういう記事が多くなる。やむを得んことじゃ。またBBQは始めは楽しいが、後でマンネリ化するんで、次の興味は誰々と誰々は仲が悪いとかいうゴシップネタとなる。そうなったら組織として機能しなくなり、発展は望めん。人間が腐るのはいいが、このままでは車まで腐ってしまう。こういう低レベルなことから、何かを実現するために努力し達成感を味わうという高いレベルに持っていったら、こんなに面白いことはないよ。

助手: 低レベルだといって、またバカにして〜。

教授: 美食を極めるでもなく単に食欲を満たすだけ、趣味だという車は食事会場への移動手段、これ以上低レベルなことはないんだから仕方ないじゃろ。そうやってすぐバカにされていると思うのは、冷静な判断力に欠け実行力がなく結果の出せない文句を言うだけの人間に共通する項目じゃ。ダメ人間じゃ、ダメ人間。

助手: このジジイ、またバカにしやがって。

教授: バカにされたくなければ上を目指すよう努力せい。

助手: やかましい。

教授: げげっ、君、何をする!?

助手: うるせえジジイ、死ねぇ!



ブスっ!


教授: ずいぶん強引な終わらせ方じゃぁぁぁ・・あべし!

助手: へっへっへ、ざまあみろ。神も仏も死んだ。自動車趣味はこれからも悪魔の時代だ。堕ちるところまで堕ちるべし。





教授: 堕ちてはならん、堕ちてはならんぞ、自動車趣味は!!

助手: 教授、生きていたんですか!

教授: ストーリー展開上必要とあれば死者をも生き返らせる、少年ジャンプを知らんのかね。

助手: 北斗の拳に出てきた、ウイグル獄長ですね。「トキとケンシロウを会わせてはならぬ」といって一瞬だけ墓場から生き返った。

教授: 堕ちてはならん、堕ちてはならんぞ・・・・

助手: あぁあ、また死んじゃった。