プリウス(内外装)




 これがプリウスの外観。私自身は悪いとは思わないのだが、口の悪い人に言わせると、「なるべくたくさん売りたくないからプリウスはこんなスタイリングにした」という人もいるくらいだ。というのは、プリウスは一番安いものなら215万円で売られているが、これは戦略的な価格で、実際に売ろうとするとなんと500万から600万し、1台売ることに最低でも300万円の赤字が出るためだという。12月の発売までに3000台の受注があったというから、これだけでなんと90億円の赤字となる。90億円とは巨額だが、トヨタの96年度の経常利益は約6200億円。環境問題に対するトヨタの姿勢を示す車という位置づけを考えると、蚊にさされたようなものだろう。とはいえ、トヨタの嫌いな人はプリウスを買って経営弱体化の一助としよう。





 これが室内。足下の広さは通常のFF車と比較してかなり狭く、後席の足下の広さも軽自動車並みだ。しかし、シートの位置がトラックのように高いため、足を前に伸ばす必要がない。そのためこの小スペースでも窮屈に感じない。そもそも、プリウスを買うような人に狭いと文句を言う人はいないと思う。



 意外だったのが、トランクのスペース。広い。私は電池で一杯になっているものかと思っていたのがだ、これだけ広ければ十分実用的だ。ちなみに電池は、リアのシートとトランクの間のスペースに挟まっている。写真では見えないが、トランクの中には充電用のボタンがついていたりする。


プリウス試乗記
 このモーターショーの時ではないが、プリウスの試乗を行った。感想を一言で言うと、「普通に走る」ということになる。何かバカにしたような言い方だが、この普通に走るというのは実は凄いことなのだ。簡単に考えてみよう。プリウスは発進時モーターのみを使って動き出す。その間、エンジンはどうなっているかというと、完全に死んだ状態にあるのだ。エンジンは車が動き出してから火が入る。通常スターターでエンジンをかけるとぎくしゃくするが、プリウスにはそれが全く感じられない。それを考えただけでも、普通に走ることがいかに凄いかがわかるというものである。
 しかし、違和感のある部分もあった。まず、プリウスは停止時には、モーターもエンジンも回っていない。エンストしているように感じるのである。それからブレーキをかけたとき。エネルギーを回生しているため、ブレーキを踏んでからどんどん効きが良くなるのだ。エンストに感じる部分はすぐに慣れたが、ブレーキの感覚はかなり時間をかけないと違和感が抜けないと思う。しかし、プリウスを買う人はこの程度のことで文句は言わないだろう。
 プリウスの立ち上げ
 まさにこの表現がピッタリの車である。普通の車ならスターターの音とエンジン音が響きわたることで「発進準備よし!」という実感が涌いてくるものだが、プリウスはそうならない。キーを回すと何か変な音がして、エアコンのダクトの間にあるモニターに「Wellcome to Prius」と表示される。パソコンの立ち上げと同じ状態だ。またエンジンは死んだ状態にあるから、実に静かというか淋しささえ漂う。
 次の段階として、モニターにモーターとエンジンのどちらで動いているか、充放電状態はどうなのかを示す画面が表示される。実際に車を動かすと、発進はモーターのみ、加速はモーターとエンジン、減速とか下り坂では充電という具合にこれらの表示がめまぐるしく変わる。試乗したのは約7kmだったが、充電量を示すインジゲーターに変化はなかった。上手く回生するものである。


ハイブリッド車の問題
 以上見てきたように、いい点がいろいろあるハイブリッド車だが、問題点もまた多い。なんといってもコスト高。プリウスの場合は神風戦法的戦略価格で安く出せたが、さすがのトヨタも第2、第3のハイブリッド車は簡単に出せまい。コストに関しては100歩譲ってスケールメリットで少しは安くすることができるとしても、問題は他にある。中古車価格である。ハイブリッド車は電池が搭載されているが、これは今の車についているスターターを回すために存在するような安価な鉛電池とは訳が違うのだ。この電池は走りに直接影響を与えるもので、しかも走れば走るほど電池の性能が落ちる。今の車に例えると、古くなればなるほど、ガソリンタンクに穴が空いてくるようなものなのだ。こんな車、中古で誰が買うだろうか。しかも電池の新調には莫大な費用がかかる。スケールメリットが十分でていると思われるノートパソコンの電池の価格を考えてみてほしい。たったあれだけのものが1万から2万円もするのだ。プリウスの場合は量産第一号ということで珍しがられてそれなりの価値を保つだろうが、第2・第3のハイブリッド車はそうもいくまい。今後数社からハイブリッド車が出るとすると、例えばトヨタのハイブリッド車はトヨタの販社しか高い価格で下取ってくれず、しかも下取った販社はバッテリーの新調で大赤字、それを見かねたメーカーが中古車両に補助金を出すという、ユーザー・販社・メーカー三つ巴の「ハイブリッド車地獄」が来ると十分に予測される。