欠けたピストン

 エンジンの回転が今ひとつ上がらない・・・ということでオーバーホールしたT兄キさんのエンジン。分解してみたら、なんとピストンの縁がかけていて、そこがシリンダーブロックにあたっていた。回転が今ひとつ上がらない原因はそれだったのだ。現在のT兄キさんのエンジンは、シリンダー内面をボーリングしてオーバーサイズピストンが入っている。
 写真で見た目、欠けた部分の周囲の色と、欠けてない部分の周囲の色が違う。触ってみると欠けた部分の周囲はざらついているが、欠けていない部分はそうでない。どうやら溶損しかかっているようだ。






 欠けた部分を拡大してみた。ピストン丸ごとはSEMの装置の中に入らないため、今回は光学顕微鏡で撮影した。すると、欠けた部分とそうでない部分の表面状態がよく似ていることがわかる。さらに欠けた部分に傷らしきものがついていない。つまり、何かの異物を噛み込んで欠けたのではなく、その部分がぽろっととれたのではないかと考えられる。




 ではなぜぽろっととれたのか。その原因は、鋳物の巣にあるのでなはいだろうか。ピストンはもともと鋳物で出来ており、あとから切削して形を整える。鋳造の際、巣ができており、エンジンの振動やピストンの上下運動により加わる力+溶損手前の熱負荷によって、巣を起点としてぽろっととれたのではないかと思われる。

手前に焦点を合わせた 欠けた部分の奥側に焦点を合わせた

欠けた部分と、欠けた周辺の状態が同じであることがわかる



 というわけで、今回の解析はこれでおしまい。また新たな(わけのわからない壊れ方をした)エンジンや部品が入ったら解析を行い、n数を増やして確度を高めていく。