自動車趣味をまっとうにするための提言
1.旧車・稀少車・趣味の車のオーナーの方々へ
私は旧車・稀少車・趣味の車のオーナーの方々こそが自動車趣味のリーダーたるべき人々と思っている。しかし現状はというと、全てとは言わないが今まで述べてきた通りだ。さらに悪いことには、旧車のオーナーには年寄りが多い。つまり、過去の惰性だけで行動する現状維持型のため自己変革などとても期待できないということだ。
しかし、しかしである。年寄りは消える。近い内に消える。消えないにしても腰が痛いとか言い出して車を降りる日は遠くない。チャンスはここしかない。現在旧車・稀少車・趣味の車に乗っている、またこれから乗ろうとしている若い方、年寄りが減ったのを見計らってこのつまらない状況を立て直し、自動車趣味のリーダーにふさわしい活動をして欲しい。立て直すといっても難しいことではない。当たり前のことができるように正常化すればいいだけである。まずは自分たちの乗っている車に関する技術や情報の蓄積を図ろう。そしてこれらを何かのイベントの時に広げよう。これだけで、自動車とは何の関連性もないイベントが、自動車のイベントらしくなる。最終的にはどうするかというと、手前味噌ながらこのHPをそのままパクってしまえばOKだ(笑)。つまり得られた情報を体系的に蓄積し、誰でも見ることが出来るようにすればよい。
2.趣味系自動車雑誌の関係者の方々へ
ここで述べることはあくまでも趣味系自動車雑誌を対象としており、一般の自動車雑誌を対象としたものではない。
上述のような現在の堕落した自動車趣味を形作った原因は、第一にオーナーの自覚や問題意識のなさにあるのは間違いないが、自動車雑誌も少なからず悪影響を与えたと考えている。また趣味系自動車雑誌の将来は明るいとは言えない。素人がプロに取って代わる時代だからだ(プロは用済みになるということ)。そこで自動車趣味をよりよくしさらに趣味系自動車雑誌が生き残るための道として、素人には発想できない企画を持つ雑誌、例えばオピニオンリーダーとしての復権を目指していただきたいと思う。
順を追って説明しよう。まず、自動車雑誌が悪影響を与えたという点。これは堕落した自動車趣味のイベントについて取材しそれが雑誌に掲載され、それをみた読者は「この程度でいいのか」と思い、そういうレベルのイベントをやってしまう。さらにそれが取材され雑誌に掲載され、読者はイベントの記事を見て「この程度で良いのか」と思う。この悪循環。これではまずい。
次に趣味系自動車雑誌の将来は明るくない、素人がプロに取って代わるという話。私もコンピューター関係で連載をやっていたこともあるので分かるのだが、インターネットが絡んできて本当に淘汰が激しくなった。実例を挙げると、Mac Userという雑誌があったのだが、インターネット普及の影響を受けて廃刊、代わって有料のメールマガジンMacintosh Wireとして生まれ変わった。しかし一発芸をもった素人が寄り集まり、プロ顔負けの情報を無量で発信するようになった。そうすると有料のメールマガジンの存在意義は全く無くなるため、Macintosh Wireは無料化されMacWIRE Expressとなった(この時点で一部のプロのライターがリストラ)。さらに先日、MacWIRE ExpressはPCUPdate Expressとなり、Windows情報と併合されてしまった(またまたリストラ)。
恐るべき淘汰ぶりである。この最大の原因はインターネットの発展により、素人がプロに取って代われるようになったことだ(Macが死にかけというのもあるけど)。これは素人の方がプロより能力があるということではない。素人には納期がない。原稿文字数の制限がない。なんといっても人件費がかからない。これらの強みを生かした上で、一発芸をもった多数の素人がリアルタイムでコミュニケーションできるインターネットを媒体にして寄り集まり無料で情報を発信すれば、月刊で遅い情報しか伝えられない労務費のかかるゼネラリストのプロを越えられる。例えばこのHPを例にとると、単一の車種に関しこれだけの情報量もった本を作るとすれば、採算がとれないのは明らかだろう。仮に作ったとしても、このHPを越えた内容でなければ雑誌の存在意義はない。素人にとってかわられ、たとえ良い本を作ったとしても採算がとれない。趣味系自動車雑誌は袋小路にはいっている。
長くなったのでいきなり対策に入ってしまうが、以上の状況を打破する手段は2つ。1つは、想定する読者のレベルを下げることである。「つまらないことを、つまらないと思わない読者」にあわせた誌面づくりをすれば、有能な(笑)読者と棲み分けることができ、生き残ることはとりあえず可能だ。上述の悪循環の結果、読者のレベルは下がっていくと思われるので対応は容易だろう。しかしこれではあまりに悲しい。
もう1つの手段は素人にはとてもまねできない企画をたてることだ。素人に勝つ道はこれしかないし、プロとして当然選択すべき道だろう。そこで私が願ってやまないのが、自動車雑誌がオピニオンリーダーとして復権することである。上述の通り、一発芸を持った素人が集まったとしても、所詮方向性のバラバラな人間が寄り集まっただけである。方向性が明確でないがゆえに、せっかく収集した情報が単に情報として蓄積されるだけで、それをどうやって生かすべきかがまとまりにくい。そこで全国で発売されている自動車雑誌の登場である。彼らをまとめるだけの、素人には発想できないプロならではの概念提示がほしい。素人を納得させるだけの明確なビジョンや目標、計画性もほしい。そうすれば自動車趣味をよりよくすることができ、他の雑誌とは一線を画す趣味系自動車雑誌が誕生する。
しかしこうして説教臭い雑誌になることで読者の数が多くなるかは疑問だが、説教臭い当HPのアクセス数は着実に伸びていることから、それなりの需要はあるのではないか。ちなみにここのHPの開設初期のアクセス数はわずか1日あたり50件であった。また無茶な比較だが、ここのHPのアクセス数1回が雑誌1冊の売り上げに相当すると仮定したら、恐らく趣味系自動車雑誌の1ヶ月あたりの実売部数(発行部数ではない)を上回っていると思われる。なお、新聞雑誌部数公査機構である(社)日本ABC協会に加盟している自動車雑誌はCarトップ(←少なくとも趣味系自動車雑誌ではない)だけであるため、正確なことはわからないのだが・・・要は、まじめくさった企画をやっても趣味の車の世界ではそれなりの需要はあるのではないかということだ。
現在の趣味系自動車雑誌の役割は「読者が所有できないような非現実的な車について記事を書くことで、読者に夢を与えて喜ばせること」に成り下がっているように感じる。美しい写真と文学的日本語表現の羅列に頼って、核心部分はお茶を濁しているようにも感じる。読者に媚びず、現実を直視した上で具体的提言ができるよう自己変革することを願ってやまない。またこれから自動車雑誌の編集者を目指そうという方、自分の雑誌の存在意義は何なのか、なぜこの記事を書かねばならないのかを常に自分に問いかける姿勢で臨んでもらいたいと思う。
3.最後に、これを読んでいる次の世代の若い人、そしてAZ−1オーナーの方々へ
以上のような惨状を鑑みるに、我々AZ−1オーナーが旧車・稀少車・趣味の車のリーダーの一角として立ち上がらねばならない時が、そう遠くない将来にやってくるだろう。なぜなら膨大な情報の蓄積、それを多くの人につたえることができる媒体の存在、将来に対する備え、質の高い活動内容、全国のオーナーとほぼリアルタイムでしかもほぼ無料で交流できる環境にあるという、自動車以外の趣味と比較してやっとこさ普通のレベルにある活動をしている車はAZ−1ぐらいだからだ。これを読んでいる次の世代の若い人そして我々がリーダーとして立ち上がり、AZ−1で構築されたシステムをAZ−1内だけにとどめず他車にも展開することで、旧車の犯した過ちを是正しより充実した自動車趣味へと変革していこう。以上のような取り組みだけで万全とは思わないが、現状で可能なものから手をつける必要がある。以上を今後の目標として明示し、今年の一般教書演説を終えたい。
補足1:アマチュア無線が衰退しても一定のレベルを保っているのは、資格取得のための試験があるためだ。
補足2:現在のアマチュア無線局数が最盛期の約半分までに落ち込んでしまったということを書いたが、これはあながち悪いことではない。なぜなら、やる気のない連中が淘汰されただけで、最終的には少数の「本物」が残ったからだ。言い方を変えると「量より質」となる。従って、2ドア車の販売台数の落ち込みは、自動車趣味をやる「本物」の才覚を有するオーナーに絞られたということだと期待したい。