smartインプレッション

 今回、AZ−1オーナーでもありsmartのオーナーでもある石原様よりsmartのインプレッションを頂いたので紹介したい。


 AZ-1,ユーノスロードスターを持っているのですが,smartを衝動買いしてしまいました。
#どうしよう。。
 この3台のどれを取っても個性的な車ですが,まだ正式輸入から日の浅いsmartのインプレッションを書いてみます。


1.smartとは
 時計のswatchとダイムラークライスラーが設立したMCC社の開発したマイクロカーです。実は,swatchは,MCCから完全に手を引いてしまいましたので,今やsmartは,100%ダイムラークライスラーの子会社の車です。企画はスイス,設計はドイツ,生産はフランスという,EC製の車です。
 smartの発想は,普段の車の用途では,乗員は2名以下で比較的近距離の移動に使うという,シティコミューター的なものという考え方から作られた車です。そのためか,デザインは非常に大胆です。
 サイズは,全長2.56m,全高1.55m,全幅1.515mの2シータ−。車重は750Kgで,598cc/55psのインタークーラーターボエンジンを搭載しています。
 くわしくは,公式ホームページhttp://www.smart-j.com/を見ていただきたいのですが,走っている姿は,1/1チョロQといったところで,なかなか笑いを誘う車です。
 排気量は,日本の軽乗用車規格よりも小さいのですが,全幅が軽乗用者枠よりも少々広いため,5ナンバーとなります。これを粋(イキ)と見るか,無駄と見るかは,大きく意見が分かれるところでしょう。
 smartは,今から2年前にヨーロッパデビューをしていて,日本には,スマートジャパンという会社が輸入(並行輸入版?)していました。オーナーの希望によって,オーバーフェンダーを切り詰めてタイヤサイズを変更し,軽自動車登録をしているものもずいぶんあったようです。
 正式輸入は,昨年12月からダイムラークライスラージャパンが始めました。私が買ったものもこれで,「正式輸入車2,500台限定,アルミホイールつき」というものです。この限定版は,あっという間に売り切れてしまったようです。
 ただし,正式輸入版は,すべて5ナンバーです。これは,安全対策のために後輪のトレッドを広げたので,それを縮めることはできないということだそうです。
 全体的な雰囲気は,swatchに乗せられてダイムラー流お使い車を作ったら,smartができたというところでしょうか。


2.外観と内装
 特に特徴のある外観としては,前後とも,オーバーハングがほとんどないことが挙げられます。印象としては,トヨタのエスティマを2ドアにして小さくしたような感じです。
 ステアリングは,左ハンドルのみ。少し乗れば慣れますが,私は,まだsmartに乗ると「緊張感」があります。遠からず右ハンドルを発売するという噂もあるんですが,どうも構造上無理(全部作り直さないと右ハンドルにできないらしい)のようです。購入を考えている方は,あきらめて左ハンドルを買いましょう。
 さて,ルーフは,グラスルーフなんですが,サンシェードは,天井の1/3位を被う位の大きさで,前後にスライドさせて直射日光を避けるだけ(!)です。このため,夏場がちょっと心配です。
 内装は,日本車ではお目にかかれないカラフルなものです。オレンジとブルーとどちらにするか,最後の最後まで迷いました。結局ブルーにしましたが,少しだけ心残りです。オプションのタコメータと時計は,付けていないので,インパネの上はすっきりしてます。メータを付けると,「かたつむり」の目のようです。
 キーの位置は,シフトノブの手前にあります。ATモードならあまりシフトノブを触る必要がないのですが,マニュアルモードではちょっと邪魔になります。
 変なところにドアロックスイッチ(エマージェンシーランプのスイッチのまわりにデザインされている)と,右ドアのパワーウィンドウスイッチ(ラジオの右下;これは日本仕様のみ)があります。
 アクセルは,吊り下げタイプではなく,今では珍しいオルガンペダルタイプのものです。ブレーキペダルもフロアから生えています。まぁ,smartでスポーツ走行もないでしょうが,「変」という感想はついて廻りますね。


3.曲者6速ミッション
 日本仕様は,キーオンでATモードになります。シフトレバー横のボタンを押せば,マニュアルモードにも切り換えることができます(ヨーロッパ仕様は,キーオンでマニュアルモード)。
 smartには,6速シーケンシャルシフトのセミオートマチックトランスミッションが搭載されています。ポジションは,+/−;N−Rとなっています。このトランスミッションがなかなか曲者で,普通のオートマチックに慣れた身には,相当の違和感を覚えます。雰囲気としては,ノークラッチ(クラッチは,車が勝手に操作してくれるけど,マニュアル風)といったところでしょうか。
 ATモードでアクセルを踏み込んでいくと,勝手にアクセルオフ(!)になってシフトアップします。この振るまいは,「おれがアクセルを一生懸命踏んでるのに,何でエンジンブレーキが掛かって減速するんだよ」という気分になること請け合いです。それから,アクセルのストロークが大きく,相当アクセルを踏み込まないと進みません。
 このミッションには,普通のATのような,ドライブレンジに入れるとアクセルを踏まなくても進む「クリープ現象」がありません。このため,不用意に発進するようなことがなくて,安全は安全なのですが,普通のATのつもりで坂道発進をすると,バックして冷や汗をかきます。
 一方,マニュアルモードでは,それなりにエンジンを回せるので,ATモードに比べてキビキビ走れます。その代わり,エンジン回転数が一定以上になるとシフトアップガイドの表示(↑)が点滅するのがうっとうしいです。逆にあるギアでの走行が負荷になってくるとシフトダウンガイド(↓)が出て,何も操作をしなければ,勝手にシフトダウンします。
 なぜこんな(ユニークな)トランスミッションを積んだのか良く判りませんが,smartと付き合うには,この曲者トランスミッションと付き合わなくてはなりません。うちの近所に走行距離200Kmそこそこで出ていた中古smartがあったのですが,きっとこのATになじめなかったのではないかと,推測します。
 エンジンのインタークーラーターボは,非常にマイルドで,存在を忘れてしまうような効き方です。
 実際に走ってみて,ボディ剛性は,信じられないくらい高いです。足回りは,少々固め,シートも固めでなかなか良い作りです。ただ,ブレーキの効きがもう一つかな。


5.smartは売れるか
 はっきり言って,売れないでしょう。私は,いま道路を走っているsmartオーナーは,一部の物好きだろうと確信しています。
 普通の人が「左ハンドル,2人乗り,5ナンバーの軽」を130万円出して買うとは,とても思えません。やっぱり,大半の人は「車を買うなら4人乗れて,荷物もそれなりに積めなきゃ。それに600ccで5ナンバーなんて損・・・」という選択をするのが関の山だと思います。買うのは,余程の好事家でしょう。
 それから,曲者6速ATも問題だと思います。まぁ,アバタもエクボで,味があるといえば味があるのですが,smartを買って1か月,やっとATに体がなじんできた(体が合せた?)ところです。
 自分自身,「もし試乗をしていたら,もしかすると買わなかったかも知れない」というのと,「やっぱりこれだけ目立つ2シーターはそうそうないんだから,買って正解」という思いの狭間にいます。
 ほんとうは,小回りがきくマイクロコミュータの需要は,あると思います。ただし,日本には「軽自動車枠」というタガがあり,これからはみ出す車は,あまり受入れられないのではないかと思います。
 でも,AZ−1のような役立たず車が好きな向きには,smartって,とっても魅力的に映ると思うのですが。みなさんは,いかがでしょうか。smartで走る楽しさは,AZ−1の対極にあると思います。


番外編;市川さんの指摘について
1.smartはAZ−1より暑い?
 そうかも知れません。でも,まだこの車で夏を越したことがありませんので。。
 熱源は,インパネからの輻射よりも,グラスルーフからの直射日光(?)ではないかと思います。正直言って,真夏が心配です。

2.smartはAZ−1よりうるさい?
 乗り較べた結果,AZ−1よりも静かです。エンジンルームと室内とは,当然ハッチ(鉄板)と遮音材で仕切られます。ただ,少々低音部の遮音が気になります。

3.smartはAZ−1より荷物が積めない?
 こんな狭いラゲッジスペースでも,容量は150リットル,多少無理をすれば,363リットルあります。それに,何と言っても「荷物を積むための平面」があるので,傾けたくない荷物(ケーキとか,イチゴとか)を積むには,うれしいです。
 AZ−1で良くやる,シートとの間に荷物を押し込むこともできますから,AZ−1よりよっぽど積めました。

4.smartは追突に弱い?
 いちおう,後ろにもクラッシャブルエリアは,確保しています。厳しさではピカイチのダイムラーの社内テストはクリアしているので,まぁ,AZ−1よりは安全だと思います。でも,試したくないですけど。。