AZ−1専用プーリーのベアリングを見る

 クラッチ、電磁コイルは流用できることがわかったが、プーリーはAZ−1専用であることもわかった。プーリー自体が壊れることはまず考えにくいが、軸の部分にベアリングが入っている。これが壊れる可能性は十分にある。



 ベアリングを拡大したところ。品番は30BD4718DUM1となっている。探してみたところ、現時点ではモノタロウには無かったが、アマゾンで見つけることができた。ベアリングのサイズは、品番の通り外径が47mm、内径が18mmである。なお、単に圧入されているのではなく、爪でとめられているので、取り外すには爪を起こす必要があると考えられる。



 メーカーはNSKだった。





 ここからは余談。今までコンプレッサーの話をしてきたが、いきなりオルタネータの話へと飛ぶ。デンソーが一番例に挙げやすいので、以下デンソーを中心に話をするが、他のサプライヤにも共通する話でもある。
 デンソーは、コンプレッサーの他にオルタネータも作っている(正確に言うと、ありとあらゆる電気系の部品を作っている)。ここで1つ疑問が出てくる。オルタネータの内部構成部品は他のメーカーも含めて一般の部品商から一般人が入手可能な状態にある。ところが、コンプレッサーの内部部品は、デンソー直販のみみたいなのだ。ネットでぐぐると構成部品はヒットするが、個人販売はしていない。

 日本を除く海外の一般の部品商で売られているオルタネータの構成部品のほとんどは、実は純正品ではなくコピー品である。そのコピー品たるや、デンソー、三菱、日立、ボッシュ、ルーカス、デルコ、バレオ、マレリ等々色々な部品が網羅されている。そうなると純正部品は全く売れなくなってしまう。
 ここからは憶測になるが・・・
1.昔のオルタネータの部品供給契約は、かなり曖昧だった(特に外国製のもの)
  たとえば、外車では同じオルタや構成部品が別のメーカーの車に使われることはよくあった。
2.そのため、この型のオルタはこの自動車会社にしか供給しないという、独占販売契約を成立させることができなかった。
3.契約がないから、構成部品が一般の部品商にも出回ることになった。
4.誰でも部品が入手できる状態になったことから、コピー品が出回り始めた。
5.その結果、オルタの部品はコピー品を黙認するという商慣行(?)ができ、現在も続く羽目となった。
6.そうこうするうちに、デンソーなど日本製の部品が世界を席巻し始め、悪しき商慣行に巻き込まれざるを得なかった。
7.一方でコンプレッサーについては、オルタの二の舞を演じることを避けるため、日本の部品メーカーが新たな国際秩序をつくりはじめ、
  独占販売契約をしっかりと成立させ、コンプレッサーの構成部品については、一般人が買える部品商には出回らないようにした。


 というのが、嘘かホントかわからないが私の見立て。私の見立てを否定する事実もあり、例えばダイレクトイグニッションのコイルはコピー品が出回っている。コンプレッサーで独占契約ができるのなら、ダイレクトイグニッションでも成立させることができてもおかしくないのだが、実体としてできていない。製造・組み立て拠点が中国など海外が中心だから、何をやってもコントロールが効かないためかもしれない。

 よく、外車には自動車文化があるから古い部品が出てくる、一方で日本車は自動車文化がないから部品の供給がすぐ止まる、という論調がある。が、私の見立てが正しければ自動車文化云々という美談ではなく、単純に契約の問題であり、コピー品が横行するかどうかの問題なのだ。

 で、オルタの構成部品のコピー品だが、さすがにデンソーや三菱のお膝元である日本ではおおっぴらに売られていない。コピー品を手に入れたければ海外の通販で買う必要がある。私がよく使うのは、自動車文化があると言われるイギリスの部品商(一例に過ぎない)。こちらはドイツの部品商。純正品っぽく売られているパーツのほとんどは、コピー品である。値段が日本で買う純正品よりも遙かに安いことから判断できる。

オルタの部品の例。デンソーの部品もあるが、コピー品。

スターターの例。契約がしっかりしているのか、部品商の得意領域でないのか、日本製のラインナップはほとんどない。

 こういう海外部品商の存在を知らなくて「部品が無いから直せない」と言い出すところもあれば、コピー品を売る部品商の存在を知っているが故に、安く部品を仕入れて「特殊技術料」を上乗せし暴利をむさぼる日本のショップもあるので注意が必要だ。なお当然ながら、日本のショップやメディアは海外の部品商のことを客には決して知らせない。
 一方で、客側もこういう基礎知識を有していないから、ショップの言いなりになって高いカネを払い続け、旧車を維持できなくなり手放してしまう。毎度の結論に達してしまうのだが、「旧車は楽しい」というような口車に乗せられると、車も人もろくなことにならない。



 余談でオルタネータの話を持ち出したが、今回はこれでおしまい。次回は、AZ−1のコンプレッサーのデンソー純正リンク部品を見ていく。