小林平治の夢とロマン

 今回の特別企画では、広島市交通科学館で行われた「小林平治の夢とロマン」についてレポートしよう。
 2年前に他界した彼は、東洋工業(現マツダ)でコスモスポーツ、キャロル、R360クーペのデザインに関わってきた。この「小林平治の夢とロマン」では、カーデザイナー小林平治が、自動車に抱き続けてきた思いを綴ったイラスト集「マツダ伝説」の原画の展示と彼の関わった実車の展示を通して、今にもないモノづくりへの情熱を体感してもらうというものである。


展示会の概要

 彼の遺作「マツダ伝説」と、彼がデザインに関わった車、時代背景及びそれらと関連のある品々の展示が行われている。
 いつもなら次に詳細等を紹介するところなのだが、今回はこれがまとまらないのである。というのが、この企画の柱というべき遺作の「マツダ伝説」の内容が結構ブッ飛んでおり、さらに展示会自体がそのブッ飛んだ内容とリンクしていないので、訳が分からないためである。とても「今にもないモノづくりへの情熱」は体験できない。というわけで、今回の「特別企画第5弾」では、詳細は割愛させて頂きたい。ただし、何が言いたいのかがわからないだけで、展示物の質や量が劣っているというわけではない点がせめてもの救いである。
 従ってこの交通科学館の企画・構成は残念ながら失敗であると言わざるを得ない。が、「とにかく古いマツダの車がみたい」、という人にはおすすめである。なお、この企画は'97.1.19まで開かれている。交通科学館へのアクセスは、アストラムラインで「長楽寺」駅下車、すぐ。詳しくはhttp://www.vehicle.city.hiroshima.jp/まで。


マツダ伝説

 問題のマツダ伝説であるが、上述のように完全に「切れている」内容だ。まず、火星でコスモスポーツが走っているのが目撃された・・・という絵と解説から全てが始まっている。後はおして知るべし。凡人は2ページ目でついていけなくなった。梶井基次郎の「檸檬(レモン)」を超越するSFである。ただ、わかる人はわかるらしく、某大学教授は「車が失いかけている感動や夢を取り戻そうとする自由人・小林平治の心意気が伝わってくる」(パンフレットより抜粋)と解説している。


マツダ伝説の一部。所々にコスモスポーツが描かれている


小林平治氏について

 今までの説明からもわかるとおり、彼はかなり変わった人、よく言えば自由人だったようだ。例えば、雨が降ると会社へは行かなかった。理由は「傘がないから」等など。
 しかしその経歴はすごい。第11回東京モーターショー・ベストスタイリング賞受賞、第7回機械工業デザイン通産大臣賞受賞、通産省グッドデザイン選定商品多数等など。自由人だからこそなし得たことなのかもしれない。


展示車両

 会場に展示してあった実車を解説とともに写真に収めた。どの車も実に美しい。人間、時代とともに進歩しているはずだが、これらの車を見るとカーデザインは時代とともに退化していっているように思えてならない。
 なお、車のスペック等の詳細は、リンクのページで紹介している「がんばれマツダ」のページまで。

コスモスポーツ
 世界初の2ローターロータリーエンジン搭載の実に美しい車

キャロル
 ロータリーエンジンの搭載も検討された軽自動車

R360クーペ
 発売当時、日本で最も安かった自動車

広島市交通科学館
 自動車をはじめ、船、飛行機、鉄道の歴史が見てわかる