エンジンルーム&蓋モノ

 エンジンルームは展示期間中、1回だけ公開された。時間も15分くらいだったかな。それゆえ、貴重な写真ばかりである。

 ボンネットが開けられたところ。高級ベッドの表皮のようなインシュレーターに驚かされる。しかも劣化して落ちたりしていない。



 これがエンジンルームだ。前述の通り、エンジンは木製。が、他のパーツは本物が組みつけられている。どれが本物で、どれがモックアップか判別できるだろうか??



 で、これが400CC×2ローターの木製エンジンだ。ちょっと写りが悪くて残念なのだが・・・現在の1ローター/2プラグではなく、1ローター/1プラグになっている。この写真の中で本物の部品が使われているのは、プラグ、プラグコード、デスビも本物である。分解してみたら仏像の五臓六腑よろしく、木製ローターが出てきたらうれしいのだが。
 なぜモックアップにしたのかというと、エンジンそのものができていなかったこと、仮にエンジンが出来ていても当時の最高機密なので、社外に持ち出すことはできなかったためと思われる。



 キャブは本物、オルタネータは木製である。本物とモックアップの区別が付かない出来栄えだ。今のレベルで考えると少々やりすぎの感もあるが、それだけ真剣だったと解釈しておこう。ちなにみオルタネータの奥に見えるバッテリーは、本物である。



 こうみると、エンジンさえ完成すればすぐにでも動かせそうに見えるのだが、1つ決定的に足りないパーツがあった。それはラジエター。下の写真では、ラジエターがないために、エンジンルームからラジエターグリルが丸見えだ。またフロントグリルからもエンジンが丸見えになっている。ラジエターが付いていたのにはずさて紛失したのか、もともと付いていなかったのかは不明。ただ、ラジエターホースが見えないので、もともと付いていなかったのだろう。



 そうは言ってもエンジンを載せたかったのだろうか、それともデザイン検討用の車の仕組みなのだろうか、面白い仕掛けがある。矢印部分がそうで、この車は車高が変えられるようになっている。現在は軽い木製エンジンを載せたときにちょうどよいセッティングになっている。本物のエンジンが乗ってフロントが沈んでしまっても、車高を調整できるのだ。



 矢印部分は欠落していたヘッドライト。レストア時にワンオフで作ったものだ。倉庫で放置されていた間、このスペースは鳩の巣になっていたそうだ。



 FFであることを示す、ステアリングのリンケージ。



 もう1つの蓋モノ、トランクルーム。これもまたインシュレーターの出来がいい。左には、給油口とガソリンタンクをつなぐパイプが見える。
 この車、雨の日には走らないつもりだったのか、エンジンルーム、トランクともにウエザーストリップのような防水対策がされていない。あ、そんなことを言ったら、防水対策がなされていないAZ-1は雨の日は走れないなあ(笑)。



 次頁から、S8Pの生い立ちを紹介したパネルを見ていく。