一番食いつきの良かった部分

 ロータリーエンジンの試作機なども展示され、様々な見所があるマツダミュージアム。さてロードスターオーナーが一番食いついた部分はどこかというと・・・車の開発過程を説明するコーナーだった。このコーナーへ入った瞬間、ツアー参加者の目の色が変わった感触を得た。全く意外な結果である。




 ここは一般の人向けに説明しているコーナーであって、一般の人が一番食いつくコーナーである。趣味の車の人は、「参考までにみてみるか」とか「ミュージアムにきた記念に見ておくか」程度の優先順位の低いコーナーでしかない。当たり前のことしか説明していないためだ。逆に言うと、趣味の車の人が一番食いつくコーナーである歴代車両展示コーナー部分は、一般の人にとっては「そういえば昔はこんな車もあったねえ」程度のコーナーでしかない。食いつく部分は人によって異なるということなのだが、まさか一般の人向けのコーナーに食いつくとは・・・


 あと未来の車、つまり水素ロータリー車を紹介するコーナーもあるのだが、ここでも食いつきというかチェック不足が否めない点が見受けられた。
 このコーナーには1991年の東京モーターショーに展示した水素ロータリーのコンセプトカーであるHR-Xがあるのだが、なぜかフロントノーズに「カモメマーク」が付いている。






 この点は趣味の車の人ならば誰もが奇異に感じて指摘する部分なのだが、ツアー参加者の誰もが突っ込まない。仕方ないのでまたしても私が「なんでカモメマークが付いているのか、いつ来てもわからん」と突っ込んだ。すると説明のお姉さんが「さすがに皆さんお詳しいですねえ。そうなんですよ。私も前々から不思議に思ってました」と返してくれただけ。
 一方1993年のモーターショーに出たHRX-2のマークは、丸みを帯びた菱形マークになっている。これは正しい。






 ちなみに私は「俺もいじってくれ〜」というHR-Xの無言の叫びがカモメマークになって現れたものだと勝手に解釈している。


 未来の車という点では、NA6を改造したロードスターの電気自動車がまだ存在するはずだ。これぐらいは引っぱり出して片隅にでも置いてよかったのではないだろうか。



 このように書くと、今回のツアーに参加したロードスターオーナーは濃くないオーナーばかりではないかと思われるかもしれないが、そうではない。筋金入りのロードスターオーナーがたくさんいた。というのも、駐車してあった初代ロードスターに限定して2桁ナンバーの車の数を数えてみたところ(こんなバカなことやったのは俺だけだ)、42台中17台が2桁ナンバーだった。実に40%の高率である。ご存じの通り、現在のナンバープレートは3桁。いつ3桁へと切り替わったかというと、2代目であるNBのロードスターが出た途中からだ。つまり初代のロードスターは全て2桁ナンバーだった。
 一方、町中で見かける初代ロードスターのほとんどは、3桁ナンバーとなってしまった。そんな中で40%もの2桁ナンバーの初代ロードスターが集まったというのは驚異的である。いるところには、いるもんなんだなあ。

 20年を経たロードスターオーナーの車への向き合い方を見ると、「気分はこっちの世界(趣味の車として捉えている世界)」にあるのだが、「やっていることは、あっちの世界(車を実用車として捉えている世界)」にいるという中間地点にいるように見える。
 しかしもし何かのきっかけがあれば、車に対する向き合い方は間違いなく変わる。こっちの世界へと変わる。2桁ナンバー車の筋金入りオーナーの多さからして、その分優秀な人材もたくさんいるはずだ。眠っている優秀な人材の数は、他のどんな趣味の車よりも多い。その数や、まぎれもなく世界一だろう。繰り返しになるが、あとは優秀な人材の眠りを覚ますきっかけである。
 しかしきっかけ作りはむずかしい。というのも今までの経験からいうと、車のために何をすべきかを考えるクラブではなく、組織維持のために何をすべきかを考えているクラブ(結論を先に述べると、これこそがアナログなクラブの正体)が存在したりすると、きっかけができないからだ。ロードスターForever宣言に疑問を感じず丸め込まれるようであれば、きっかけ作りは困難であり、仮にきっかけがあったとしても気が付かず見過ごしているだろう。

 次頁からは、ミュージアム1階にあったロードスターの歴史を紹介するパネルについてみていく。