三菱 i-MiEV

 ご存知、三菱の放つ電気自動車だ。下の写真右に半分だけお姉ちゃんが写っているが、モーターショーとは違ってお姉ちゃんの数は各社とも必要最小限といっていいほど少ない。しかも技術メインの展示だから、お姉ちゃんの写真を撮ろうという奴はそれこそいない。




 今回はi-MiEVを台の上にのせて下に鏡を置き、フロアが見えるように展示していた。つまり、バッテリーやモーターの様子がわかるということ。試作車の底を見ると車の完成度がわかるのだが、さすが技術をメインとした展示だ。あえて見せつける。黒っぽい板が鏡である。




 ちょっとわかりにくいが、フロアにある黒いのがLiイオンバッテリー。以前中国電力のi-MiEVのフロアを撮影したときにはバッテリーカバーは灰色だったが、こいつは黒い。電池の総電力量が16kwhから20kwhになった第二世代のi-MiEVと思われる。




 次はモーター部分。いや〜、それにしても上手く入っている。






 上からみると、どうなっているのだろう。カーペットをはぐると・・・




 蓋が見える。これをはぐるとモーターにアクセスできるが、今回はここまで。




 気になるのがi-MiEVのフロント。一体何が入っているのだろう。見てみると、普通のiとあまり変わらない感じがする。矢印部分には鉛バッテリーも入ってるし。クーラントタンクもある。モーターの方が効率がいいのでエンジンよりは発熱量が少ないはず。となるとラジエターは小さくなっているのかと思ったが、残念ながらそこまで確認できなかった。




 実は私は電気自動車(正確に言うとバッテリーのみをエネルギー源として動く車)懐疑派なのだ。もちろん将来的にはある一定の割合のシェアを占めると思うがメジャーにはならないのではないか、今の電池の性能と価格のままでは・・・逆に、電池が革新的進化を遂げたのであれば、技術的には芽はある。革新的とはどのくらいのレベルかというと・・・経済産業省「新世代自動車の基礎となる次世代電池技術に関する研究会」で策定されたアクションプランによる電池の要求特性(必要な性能という意味で、実現可能な予測値という意味ではない)では、2030年に現在の小型電気自動車に使われているバッテリーの7倍のエネルギー密度(700Wh/kg)が必要だという。そしてコストは現在の1/40、具体的には現在20万円/kWhもする電池が、0.5万円/kWhにまで低下する必要があるという。
 というわけで、電気自動車最大の欠点を解消するため、いろいろな方法が検討されている。大半は高額なバッテリーの負担をなくすやり方である。一見するとうまく行きそうなのだが、普通に考えるとどうもうまくいきそうにない。


 まず、バッテリーをユーザーが所有せず「電気自動車向け電力サービスプロバイダ」がバッテリーを所有するという考え方。バッテリーはプロバイダが準備し、走行距離に応じてプロバイダが料金を徴収するというシステムだ。欠点はバッテリーの準備に莫大な費用がかかること。1台当たりのバッテリー価格が仮にたったの10万円(←現状の技術の延長線では、まず実現不可能な価格)であったとしても、100万台の電気自動車に乗せようとすると電池代だけで100億円の費用がかかる。また全車統一規格のバッテリーでないと効率が悪い。しかしながら、パソコンや携帯電話でさえ、機種によって電池の形状がバラバラである。性能の最適化を図るためだ。全車統一規格なんか、本当に作れるのかも含めて疑問が残る。

 次に、電気自動車用のバッテリーとして使えなくなっても、家庭用蓄電装置、発電所の夜間電力蓄電装置などに再利用してしまおうという考え方。バッテリーが劣化した/しないの情報は、テレマティクスで収集する。しかし需要と供給のバランスがとれないとサイクルが上手く回らない。

 最後は毛色が変わって電気自動車を電力インフラとしてしまおうという考え方。社会で消費する電力の負荷変動に応じ、電気自動車に蓄えた電気を買電できるようにする。買電が進まない日本では難しいが、ヨーロッパあたりでは上手く行くかもしれない。しかし、電池の寿命をいたずらに短くさせるだけのような気もする。



 一方、電気自動車が一般化すると現状の自動車業界にとって不都合の出てくる可能性がある。電気自動車を自動車会社だけでなく、家電メーカーが作り出す可能性が出てくる点だ。以前も書いたことがあるが、現在の自動車業界は史上最強の障壁によって異業種参入から守られている。その障壁とは排ガス規制。排ガスと燃費とコストを両立させるにはエンジンとその制御技術の連携が不可欠で、この分野だけはおいそれと真似ができない。
 しかし電気自動車が出来たら、少なくとも排ガスと燃費の両立は考えなくて済む。むしろ電池劣化の抑制と電池の大容量化は家電メーカーの得意とする分野となる。シャシー自体は衝突規制などをクリアできるものが中国でも設計・製造できるので、それに電池とモーターをひっつければいとも簡単に車が出来てしまう。
 ただし理屈の上では可能だとしても、現実的には産業界の中で「うちらのシマを荒らすな」ということで話がついてしまうだろう。電機業界にとっては自動車業界の方がお得意様だからだ。客に楯つく真似はしにくい。しかし「可能性」が出てくること自体、今までに無かった脅威であるし、自動車と電気が結びついている財閥系メーカーが掟破りで仕掛けてくるかもしれない。


 というわけで、普及を考えるとまだまだ多難な電気自動車。他の低炭素排出車も含めどれが最後に残るのか、さっぱりわからない。