疲弊する車たち

 太陽が沈んでいく。サーキット入りしてはや12時間以上が経過した。また陽がのぼるとき、いったい何台の車が残っているのだろう。





 日が暮れてピットを見回してみると、ピット内に車がたくさん入っていた。ここはセパン、マレーシア。気温が普通ではないのだ。人間よりも車が先に悲鳴を上げだしていた。





 24時間耐久におけるプロと素人の差はなんだろう。技術?、資金力?、それとも工数か。決定的な差は「完走に対する執念」と見た。プロは勝つことが目的。その目的が果たせなくなったらリタイアである。が、素人は違っていた。

 まずはこのトヨタS800の驚くべき根性を見ていただこう。なんとエンジンが下りているではないか! 普通こんな状態になったらリタイヤである。しかし高いエントリーフィーを払って参加したのだ。何もできないまま、むざむざと引き下がるわけにはいかない。勝利への欲求よりも、走ることへの執念が勝っている。
 「希少絶版車のエンジンをぶっ壊すとは、どうゆう了見か!」と思われる方もいるだろう。が、我々はぶっ壊すことのリスクと限界が分かった上で挑戦し、仮に壊しても修復できる技術力と資金・備蓄した部品を有しているのだ。これだけ完結していれば文句はあるまい。もし文句が言いたいのであれば、リスク等が勘案できるだけの情報を与えず旧車趣味をはじめるよう煽るだけの自動車雑誌の記事に対して言って欲しいと私は思うのである(例えば、Car Magazineの「100万円で泥沼にはまる」とか「300万円で絶滅危惧種を救う」みたいな企画)。こういう記事を読むといつも心が痛む。



 ヨタ8に負けないがんばりを見せていたチームは他にもあった。こちらのサニーはエンジンこそ降ろしていないが、ヘッドをはぐっている。



 予備のエンジンは持ってきたものの、どうやら使わない模様だ。





 またこのチームは、足りない部品を現地調達したとのこと。マレーシアには古い日本車もまだまだたくさん走っているので、部品は比較的入手しやすいらしい。にしても、素晴らしい根性と技術力である。