ロータリーの時代に作られた他のエンジン






 上記のような説明の前の時代に作られたエンジンが展示されていた。
まずはFORDのコスワースDFV。写真のエンジンは展示用のエンジンとのこと。これは有名なエンジン。



 ロータスヨーロッパに搭載されていたルノーのOHV。スポーツカーは、とうの昔からDOHCだというイメージがあるが、実際はOHVも多かった。上述のDFVのように、レースで活躍したエンジンがDOHCだったことにより、一般ユーザー向けのスポーツカーもDOHCだろうといった誤解が生じたことが考えられる。それ以前に、レースで活躍したエンジン自体がOHVをベースとしてDOHC化されたことも原因の1つであろう(後述)。



 当時のロータスヨーロッパのカタログも展示されていた。





 「魅惑のコクピットはあなただけの世界!」という、当時の金持ち向けのコピーがある。車両のスペックを見ると、全長・ホイールベース・トレッドともAZ−1とほぼ同じ。車高と最低地上高はAZ−1より高い。これだけ図体が小さいのに、最小回転半径はなんと6.7m。そこらへんのトラック並である。ロータスヨーロッパが思ったより小さい車だというべきか、AZ−1が思った以上に大きいと言うべきか。





 いわゆるロータスのツインカム。キャブはウエーバーの45DCOEだが、なぜかインマニにネジ止めされておらず、スタッドにささったままだった。なおこのエンジンに対しては、下の説明は間違いである。このエンジンはOHCのヘッドを変えてDOHCにしたのではなく、OHVのヘッドを変えてDOHCにしたものだ。その証拠に、デスビの位置をみてほしい。シリンダーブロックの中央あたりにあるが、こんなところにデスビがあるのはカムシャフトがシリンダーブロックの中にあること、つまりOHVだということである。



 OHVをベースにDOHCへ改造されたエンジンは、もう別のエンジンに変わってしまったと言っていい。ロータリーエンジンでたとえるなら、ローターが三角から四角に変わったくらいの違いがあった。
 上記エンジンの場合は、OHVの時はシリンダーヘッドがフラットで燃焼室がピストン側にあった。つまり、ヘッドは真っ平らで、ピストンがくぼんでいたのだ。オマケにヘッドの材質は鉄である。これがDOHC化されると、シリンダーヘッドは現在の車のようなアルミ製のペントルーフ型となり、ピストンも現在の車と同じようにほぼ平らとなった。クランクシャフトはハーフカウンタークランクシャフトからフルカウンターに変更された。ハーフカウンタークランクシャフトとは、クランクシャフトについている「おもり」が通常の半分の数しかないクランクシャフトのことである(言葉では説明がむずかしいんだけど)。ちなみにF6Aは当然フルカウンターである。
 無茶苦茶な改造が影響しているかどうか知らないが、ご覧の通りシリンダーヘッドより上(腰上)が、現在のDOHCに比べると異常なほど高い。そのため、エンジンの高さを低くするのにドライサンプ化もせざるを得なかった。こういうやり方をチューンナップと呼ぶべきか、切った貼ったのエンジンだと呼ぶべきかなやましい。DOHC化もドライサンプ化も、最初から高性能エンジンを作ることを狙って採用された訳ではなく、苦肉の策として採用された技術でしかなかったためだ。なお、切った貼ったのエンジンでも、DOHCとかいう言葉の響きに惑わされ、現在でも素晴らしいものだと盲信・妄想されている節はある。