カムカバー
カムカバーをはぐる。するとアルミ製のカムカバーにカムシャフトが直接突っ込んであるという、このF5とかF6エンジンに見られる独特の構造が目に飛び込んできて、思わず笑ってしまう。柔らかいアルミに鉄が接触するという構造のため、摩耗が心配なのだが大丈夫なのだろうか。
カムシャフトをみてみたが外見上は特に問題ない。ガタもなかった。
カムカバーのオイル焼けは、さすがに16万5千キロ、結構なものがある。ただ、ここが焼けているからと言って問題が発生するわけではない。
カム部分の拡大写真。特に問題はない。
同じくカムの拡大写真。これはカムの山の反対側部分である。なんか変な色をしているが、これは新品の時からこんな感じなので問題はない。なぜこんな色をしているかというと、ロッカーアームに接触していないので、磨かれてないためだ。
一方、山側の拡大写真である。オイルが付いていてわかりにくいが、こちらはピカピカ。見た目は問題ない。
カムシャフトのジャーナル部分。こちらもピカピカで問題ない。
カムのジャーナルが接触する、カムカバー部分。特に問題ない。真ん中に見える筋は、カムのジャーナル部に溝があるためできたものであるが、手で触ったところ段差はなかった。
ついでにオイルシール部分も拡大してみた。特に問題ないことが分かる。
最後はカムの山などの計測である。マニュアルに従い、マイクロメーターで計測をおこなった。マニュアルに書かれている使用限界と実測値を表にする。すると驚くべきことが判明した。数値だけで判断すると、ほとんど摩耗していないのだ。しかもばらついていない。これは元々の加工精度が高いからばらつかないのか、適度に摩耗して均一化されたためなのかどうかはよくわからないのだが、次回のレポートで触れるクランクシャフトに関しメタルが1種類しか設定されていないことから(通常のエンジンは複数存在する)、恐らく加工精度が高いためと思われる。F6A侮り難しである。
1番がタイミングベルト側。
カムシャフトのジャーナル | 1-1 | 1-2 | 2-1 | 2-2 | 3-1 | 3-2 | 4-1 | 4-2 |
基準値(IN、EX共通) | 35.725〜35.750 | 35.725〜35.750 | 35.925〜35.950 | 35.925〜35.950 | 36.125〜36.150 | 36.125〜36.150 | 36.325〜36.350 | 36.325〜36.350 |
IN側実測値 | 35.75 | 35.76 | 35.93 | 35.93 | 36.14 | 36.14 | 36.33 | 36.32 |
EX側実測値 | 35.75 | 35.75 | 35.93 | 35.93 | 36.14 | 36.14 | 36.33 | 36.33 |
それぞれの使用限度は基準値の最小値より0.05mm少ない。例えば1-1なら35.675となる。
カムの高さ | 1-1 | 1-2 | 2-1 | 2-2 | 3-1 | 3-2 |
IN側基準値 | 30.151 | 30.151 | 30.151 | 30.151 | 30.151 | 30.151 |
IN側実測値 | 30.15 | 30.15 | 30.15 | 30.15 | 30.15 | 30.15 |
EX側基準値 | 30.167 | 30.167 | 30.167 | 30.167 | 30.167 | 30.167 |
EX側実測値 | 30.10 | 30.11 | 30.12 | 30.12 | 30.12 | 30.12 |
使用限度はINが30.050、EXが30.060。
この数字が特異例ではないことを確認するため、ストックしてある他のカムシャフトも計測してみた(走行距離不明だが恐らく8万キロ程度)。すると測定値は16万5千キロのエンジンとほとんど同じだった。
以上の結果より、長距離走行してもカムシャフトにはほとんど問題が発生しないといえる。