エアコン修理顛末記


 エアコン故障が発覚したのは、8月下旬。あさってはユーザー車検を受けるという時でした。エアコンのスイッチを入れても、ブロアーファンの回る音がするだけで、電磁スイッチが入る音もショックもないし、冷風も出てきません。以前は、エアコン稼働中は「ウーウー…」という消防自動車のサイレンサさながらの音を車内に響かせて冷風が出ていたのに、全く静かになっています。
 そこで、「これは明らかに故障だ。」「(たぶん)コンプレッサーの異音が大きかったからなあ…。きっと壊れたんだ…。」「そういえば、以前、掲示板に同じような故障のレポートが出ていたっけ。むとうさんだっけ、あの人は自分で直したんだよなあ…。」などと思いながら、SOSの書き込みをしました。当時は、てっきりコンプレッサー本体の故障だと思いこんでいたのです。それ以後の、市川様に部品を譲っていただいた経過はご承知の通りです。

 さて、コンプレッサーを譲っていただいたものの、私のAZ−1を購入した店は遠いため、仕方なく、自宅近くのマツダディーラーを訪ねました。実際はちょっと敷居が高かったので、しばらくはエアコンなしの蒸し風呂状態で乗っていました。
 さて、10月初旬、意を決してディーラーを訪ねました。敷居が高いと感じた理由は、次の3点でした。
 @実車を買った店ではないため 
 A一旦整備に入庫すると、以後点検や車検を勧められるので、ユーザー車検派の自分にはちょっと面倒。
 B店に掲げてある点検・整備料金が、トヨタ店のそれより割高である。(トヨタ店では8千円でやっている12ヶ月点検が、そのマツダ店では1万1千円ほどかかるようです。)

 では、実際の様子を書きます。

 車を店に持ち込みますと、その日が新車発表会だったため、偉い人は出てこず、工場から若いメカニック氏が出てきて対応してくれました。


私:「あのー、急にエアコンが効かなくなってしまったんです。電磁スイッチは入るようなのですが、コンプレッサーは動きません。修理で直るようなら修理をお願いしたいです。  もしコンプレッサー交換の必要があるなら、代換部品を用意しましたので、そちらに交換する形で直してもらいたいです。」

メカ氏「エアコンですか。とりあえず見てみます。」

 メカ氏はそう言って前後のフードを開け、中を覗き込んだりケーブルをいじってエンジンの回転数を上げたりしていました。一番多く見ていたのは、上部に覗き窓がついている、あの筒〔整備書によりますと『レシーバ・ドライヤ』という部品〕でした。

 まず部品室から10cmほどに短く切った電線を持ってきて両端の皮膜を剥きました。次に、レシーバから出ているパイプのキャップを開け、その両端を差し込みました。どうやら電気回路を短絡しているようでした。回路を短絡すると、エンジン音が一瞬高くなるものの、すぐにまた低アイドリング状態に戻ります。

メカ氏「コンプレッサーは正常のようですね。もしかしたら、エアコンのガスが漏れて、空になっているかもしれません。」
私: 「えっ、コンプレッサーは壊れていないんですか…?!」
メカ氏「ええ、ガスが空になるとコンプレッサーが焼き付くので、コンピューターの指令によって、コンプレッサーが止まるようになっているんですよ。」
私:「…絶句…(コンプレッサーの故障ではなかった…。わざわざ部品を譲ってもらったのに…。)」

 メカ氏はそのうち、コンプレッションゲージ〔4気筒バイクエンジンのエアインテーク負圧を計測する、例の4連メーターに似た計器でした〕を取り出してきてフロントフードのロック金具にぶら下げ、検知口をレシーバの近くに接続して、ガスの圧力を測っているようでした。やがて…、

メカ氏「このメーターを見てください。針がまるで動かず、0を指しています。ガスが全く入っていないんです。どこかから漏れてしまったのでしょう。パイプの継ぎ目がゆるんだか、途中に穴が開いているか…。途中に入れてある0リングが傷むと漏れることがあります。」
「漏れている箇所を調べる方法はあるのですが、それには、エアコンのガスを充填しなければならないんです。ところが、この年式に使われているガスは『R12』というタイプのガスで、それは公害対策のために、もう生産されておらず、私共の店ではもう入荷しないんです。」
「もしお客さん(私のこと)がR12を手に入れて持ってきてくれたら、それでガス漏れしている箇所を調べ、修理することができます。まだどこかのガソリンスタンドに古い在庫があるかもしれないので、聞いてみてください。ガスは、小さいボンベ(カップヌードルの容器と対してかわらないです)に入っているのですが、この車の場合、3本必要です。」

私  「そうなんですか…。R12というガスですね。分かりました。探してみます。」
メカ氏「済みませんがそうしてください。ガスが用意できれば修理できますから…。」

 こんなやりとりがあって、半ば落胆して店を後にしました。でも点検費は請求されませんでした。メカ氏の態度も親切でていねいでした。こんなことならもっと早く車を見てもらうんだったな…、と思いましたが、後の祭りでした。

 さて、R12ガスはどうしましょう。行きつけのガソリンスタンドに聞いてみましょうか…。そんなことを考えている時、ふとヤフーオークションのことを思い出しました。(もしかしたら出ているかもしれない…。)と。
 試しにキーワード検索をしてみますと…、な、何と、たくさんの出品があるではありませんか。生産中止品なのに、なぜ? いえ、だからこそ出品する価値があるのでしょう。
 ともかく安そうな品に入札して結果を待ちますと、そのまま落札できました。価格は、250g入り缶が3本で7千円ほどでした。(振り込み費用と送料は別)ほぼ入札開始価格のままでした。

 ガスを入手するまでに約1週間。さっそくその足で車をディーラーに持ち込みました。

「(入手が)早かったですね。ではお車を預かります。修理が済んだら連絡を差し上げます。」というメカ氏の言葉を聞いて、車を預けました。

 3日後の夕方、早くも連絡が届きました。いざ店へ出向いてみると、ちゃんと車はできあがっていました。直してくれたメカ氏は留守で、代わりに偉い人が応対してくれました。修理明細は同封した通りですが、思ったよりずっと安く済みました。必要部品のOリングが届いたのも早かったです。部品代は安く交換交換工賃が高いのは、仕方ないところでしょう。 感謝して車を引き取り、帰路につきました。ちなみに、純正らしきステレオカセットの時計が狂っていたのですが、黙って直してくれてありました。自分ではどうやって調整したらよいか分からなかったので、助かりました。

 さて、その後の車の様子をお知らせします。もちろんエアコンはよく効きます。そればかりでなく、あの「ウーウー…」という特有の異音もぴたりと止まりました。あの異音は何だったのでしょう。きっとガスが漏れて代わりに空気が混じり、異物としてパイプラインを巡ったために抵抗となって異音を発していたのでしょう。(単なる推測にすぎませんが)